内容説明
桜散る闇と殺りくの街・スプラッタシティでくりひろげられる“夢の中の「私」”桃木跳蛇とゾンビたちとの壮絶なバトル―今世紀最大、史上空前の悪夢を出現させる笙野文学の代表作にして、現代文学の金字塔、待望の文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
16
私の戦い。押し込められ、傷つけられ、最初からないものであるとされ、消されかかっていた、私の。変換して組み替えて無効化する、意味を無くす、真逆にする、まったく別のものにする、そうして抜け出そうとする、壊そうとする、作りかえようとする、解き放とうとする、抗う、闘い続ける、すべて言葉を用いて。言語に言葉を以って対する。とんでもなく疲弊する闘い。敵はあまりにも根深くてしぶとい。言葉によって暴く。どんどん暴いて行く。狂ったリズム、その地獄めいた世界を構築する言語の、歪みやインチキ、欺瞞であるとか、嘘臭さや胡散臭さ。2020/11/14
ホレイシア
4
究極の言葉遊び、というか駄洒落のオンパレードというか。2008/01/02
あ げ こ
2
歪んだ観念・伝統・慣習を盲目的に遵守するゾンビ共との戦い。延々と続く悪夢の正体は、既存の女性像に対する作者自身の結論の一つであり、彼女を襲うゾンビとの戦いは、その結論に基づいた形の女性として在り続ける為の、命がけの戦いであると思う。彼女を否定する者、彼女の足を引っ張る者、彼女を蔑む者、彼等との隔たりを恐怖する、彼女の心に潜む弱く醜い影の部分。それ等全てを象徴する悪夢との、命を掛けた殺し合い。白熱の言語ゲーム。物語を動かすパワー、物語の原動力である怒りにも似たその力は存外心地よく、一気に貪り読んでしまった。2013/08/27
大福
2
強烈なエネルギーに満たされているが、何しろ難解。どう読めばよいのか。しかし、この作家が言語と戦っているのだということは分かった。たった一人で、自分の内側にある自分と戦っていくと自分が「女」という存在であるということにぶち当たる。その「女」という存在にさらに切り込んでいくのだが、ここがかなり複雑。「女」であることは逃れられず、それでも「女」であることに挑む。ワープロ(言葉?)の中で、言葉に対して言葉を使って戦う。「女」であるとは言葉の問題であり、言葉とは世界を認識する手段であるからなのか?と解釈してみた。2013/08/01
タリコ
2
既存の概念や古典をパロディーとして提示し皮肉りながら、内側に入りこんで言葉と共に戦いぶち壊し続けていく描写に、心底圧倒されてしまった。