内容説明
本書はやや異色といっていい。怪奇幻想小説やSF論と、そして探偵小説のトリックを微視的に読物風に紹介した文章とが中心になっている。それは乱歩が生涯、変身願望を心に秘め、この世でない別世界に憧れ続けたことと、探偵小説のトリックの蒐集研究に異様な情熱を燃やしたこととが、同じ根をもつものだからだ。
目次
1 変身願望
2 探偵趣味
3 探偵小説のトリック
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hgstrm2
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「われわれは一生涯、何か日常茶飯事以上のもの、「今一つの世界」を求めないではいられぬのです。お芝居にしろ、音楽にしろ、絵画にしろ、小説にしろ、それらはみな見方によっては人間の「今一つの世界」への憧憬から生まれたものではありませんか。」乱歩が描きたかったのは、これにつきると思う。決してエログロなどではない。そしてやっぱり、探偵小説は面白い。 2019/06/29
futhork
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さっと目を通しただけだが、江戸川乱歩が同時代のフランス文学や英米文学に、広く目配りしていたことがわかる。文学者による文学紹介としても、面白い内容。それから、怪談、ホラー、スリラーが、江戸川乱歩の頭の中で、どんなふうに組み立てられていったか。空想の世界が、実際の、ありきたりの、当たり前の日常の裏で、どれほど、人間の心に必要か。ファンタジーの必要ということを、「変身願望」という言葉で捉えていくことができるのは、とても豊かな視点だと思う。透明人間になりたい。2023/02/06