河出文庫<br> 天才と狂人の間―島田清次郎の生涯

河出文庫
天才と狂人の間―島田清次郎の生涯

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  • サイズ 文庫判/ページ数 232p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784309404097
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

少年時代から自分を天才と信じた島田清次郎が、弱冠20歳で世に問うた長編小説『地上』は記録破りの売行きを示し、彼は天才作家ともてはやされ、いちやく文壇の流行児となった。しかし、身を処する道を誤まり、またたく間に人気を失い、没落した。本書は、島田清次郎の狂気にも似た足跡を克明にたどり、没落のよってきたるところを究めようとした、直木賞受賞の傑作伝記小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Akihiro Nishio

21
大正時代、自称天才作家が若くして世間から持ち上げられ、やがて飽きられ捨てられた現実の話。もちろん天才などではなく、現代では若く中途半端な才能を消費するというのは珍しくもないのだが、当時ははじめてのことだったのだろう。問題の狂気だが、早発性痴呆(統合失調症)とされているが、本書を読む限り躁鬱病に見える。ただ、子供の時からの自惚れと尊大な態度は性格的なものであろうし、ずっと躁鬱病が続いていたと考えるのは不自然。性格をベースに、それが引き起こしトラブルが精神病状態を引き起こしたというのではどうか?2016/04/29

香菜子(かなこ・Kanako)

20
天才と狂人の間―島田清次郎の生涯。杉森 久英先生の著書。自分の才能を信じて自分が天才であると信じていた島田清次郎先生。周囲から天才だ秀才だと言われることを経験した人は多いと思うけれど自分自身が天才であることを信じて疑わない人はあまり多くなさそう。天才と狂人はきっと紙一重。天才でも生まれた時代が悪かったり周囲の理解がなければ簡単に狂人扱いされてしまう。狂人でもささいなきっかけで天才扱いされることもある。天才も狂人も天才と狂人の間でさまよう存在。凡人として生まれて凡人として生きるのが幸せなのかな。 2022/08/17

ほっしー

9
弱冠20歳で出版された大正時代のベストセラー小説『地上』を書いた作家・島田清次郎の生涯を描いた伝記小説。文学的能力はあったのかもしれなが、人としては完全に破綻している。狂人ぶりを表すエピソードも多数あるが、そんな彼を助ける人たちの姿もある。偏った内容ではなく事実が客観的に書かれている。時代が作り出し、時代に抹殺された彼。持ち上げるだけ持ち上げて、見切りをつけた瞬間に落とされるのは現代も似たようなもの。その点では彼も被害者の側面があるのかもしれない。彼が忘れ去られたのは悲しいことだが、まあ自業自得かな。2015/04/28

ふみえ

6
角川文庫版を読了。少し読みづらかったけれど興味深い内容だった。ここまで規格外の人は現代では生きられないと言うか、早くから治療対象となって行動出来ないだろうな。また、当時の出版物の売れ方が凄い。小説家を目指したくもなるな。蘆原将軍の侍従だったなんて驚き。2015/03/05

loanmeadime

5
川口則弘著の直木賞物語で小説なのか実話なのか、という選考時の論争に興味を惹かれて読みました。例えば、豊子という最初の妻に相当する人物は実在するのか、砂木良枝を事件後30年経って訪ねる男性は作者なのか、など、色々疑問が残ります。 直木賞物語によれば、石原慎太郎の「太陽の季節」が20万部、五木寛之の「蒼ざめた馬を見よ」が6年間で20万部だそうで、大正時代前半の30万部というのは、驚異的な数字だったのでしょう。元々、素質のある島清がおかしくなっても不思議はないのかもしれません。2018/01/25

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