内容説明
わが国の詩歌史の黎明期に登場した歌人柿本人麻呂は、古代の生活共同体を背景とする雄大な長歌を完成した。同時に、その反歌の中に〈個〉の芸術的衝動をこめて、抒情詩としての短歌の成立を促した。人麻呂の作品を通して、古代詩の成熟の跡をたどった壮大な論考!読売文学賞を受賞した、著者の輝かしい代表作が、いま蘇える。巻末に、著者の選による「人麻呂秀歌抄」を併録。
目次
序、人麻呂的なものの展望
人麻呂における詩の誕生
長歌における主題の分裂
長歌を基盤としての反歌の独立
人麻呂の先行詩人たち
挽歌的発想
長歌様式の終焉
人麻呂秀歌抄
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
7
「人麻呂が求められたのは一種の咒歌であり、人麻呂が自分に課したのも咒歌をつくることである…枕詞と序歌については、それが咒詞から発生したことについて、『日本文学の発生序説』(折口信夫)に独創的な考察がある。咒詞とは、遠来の神であるまれびとが、土地の精霊に与える命令的な詞章であり、そのなかには言霊という威力のある霊魂がはいっていると考えられていた。がんらい威力のある神が発する言葉だから、その詞章に効果を予期することができたのであるが、その後、その詞章自身独立して威力が考えられるようになった」2018/07/23
ドビン
0
宮廷歌人、代作者における地神への呪性や枕詞の意味等、多くを改めて学ばせられた良書。お勧めの一冊2015/07/04