内容説明
戦後が生み落とした二大叙事詩の比較解読。日本人の魂のユートピアを追求した手塚治虫『鉄腕アトム』と山田洋次『男はつらいよ』。涙と笑いにひそむ痛烈なアイロニー。果たして、漂泊するその心のありかは?マンガ・映画論客による渾身の痛快バトル。
目次
アトムと人類(「僕の一生のテーマは差別です」―手塚治虫との出会い;「地球人のかわりに話しあいに来たのです」―サンフランシスコ講和条約とアトム大使;「あなたは人間です。だからわたしも人間だといってください」―悪夢と化したユートピアと人間の定義;「人類はまだまだほろびはしないでしょう」―永劫回帰と紙の幻術;「おい、畑はどうするんだ?」―手塚治虫との訣別)
寅さんと日本人(「てめえ、さしずめインテリだな」―罵倒の文法;「柴又の江戸川は黒海までつながる」―馬鹿の系譜と壮大の夢;「日本人は、みんなヤクザだ」―七〇年代映画と百恵神話;「寅さん!北朝鮮に行く」は、ありうるか?―アウトローと正義のゆくえ;「桜が咲いております。懐かしい葛飾の桜が…」―作られた下町と不登校)
著者等紹介
草森紳一[クサモリシンイチ]
1938年帯広生まれ。慶應義塾大学中国文学科卒業。1971年『ナンセンスの練習』でサブカルチャー評論を展開。1972年『江戸のデザイン』で毎日出版文化賞受賞。『絶対の宣伝―ナチス・プロパガンダ』(全四巻)でプロパガンダ論を確立。以後、中国史論、美術論、デザイン論、音楽論、写真論、漫画論、映画論と批評論は多岐に渡る
四方田犬彦[ヨモタイヌヒコ]
1953年西宮生まれ。東京大学で宗教学を、同大学院で比較文学を学ぶ。ソウルの建国大学に始まり、コロンビア大学、ボローニャ大学などで客員教授、客員研究員を務める。現在は明治学院大学教授として映画史を講じている。映画のみならず、文学、漫画、料理、都市論といった広い領域で批評活動を行なう。『月島物語』(集英社文庫)で斎藤緑雨文学賞を、『モロッコ流謫』(新潮社)で伊藤整文学賞を、『映画史への招待』(岩波書店)でサントリー学芸賞を受ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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