出版社内容情報
一篇の詩のために活字が生まれ、組版、活版印刷、手製本を経て本ができあがる。当代一の職人たちによる本づくりの過程を辿った書。
内容説明
谷川俊太郎詩集『私たちの文字』ができるまでの軌跡―。一篇の詩のために書体設計士が文字をつくり、詩人が言葉を紡ぎ、それを組版工が組んで活版印刷し、製本職人が手作業で仕上げる。これは、人の手による本づくりの過程を追いかけた記録である。
目次
谷川俊太郎詩集『私たちの文字』より
序章 本のはじまり(編集会議―二〇一六年十二月七日;最初の面会―二〇一七年二月六日 ほか)
第1章 文字をつくる(墨入れ―二〇一七年八月九日;修整 ほか)
第2章 組版・活版印刷する(本の設計―二〇一八年四月某日;活字か、樹脂版か ほか)
第3章 製本する(資材選び―二〇一八年七月某日;束見本―二〇一八年八月一日 ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tamami
46
印字の書体から製本まで、手作りすることに意を注ぎながら一冊の本が出来上がるまでの工程を克明に記したもの。各工程にはその道何十年という専門の職人さんが携わり、彼らに対するインタビューも交えて、今や希少なものになりつつある「人の手による本づくり」の醍醐味や苦労話が載せられている。日々お世話になっている物としての「本」を、形として世に出していく人々の情熱が熱く語られ、感動を覚える。この業界も、パソコンや機械製本の普及と共に、熟練の職人さんたちの出番が少なくなりつつあるという。技術立国日本の足場が揺らぎつつある。2022/04/10
けんとまん1007
37
谷川俊太郎さんの詩集をつくる、詩集というか一遍の詩のための本を作るプロジェクト。プロジェクトと言うか、一つの物語と言ったほうが合っているかもしれない。新たな活字フォントを作ることろから始まり、活版印刷、製本までの一連の流れを、興味深く、かつ楽しく読ませていただいた。それぞれが、お互いに敬意を払いながらも、自分の思いを出しあい、よりいいものへ。その根底には、谷川俊太郎さんという存在が、とてつもなく大きいものがある。まさに、共同作業という成果だ。手に取ってみたい。2020/05/26
はるき
19
字体を作ることから始まる本づくり。採算とか合理性とか完全に無視。ただただ好きだから作る。こういう話大好きだ。2021/02/09
チェアー
14
一編の詩のために本を作ろうというプロジェクト。そのために新たな書体をつくり、活版印刷の技術で印刷し、手で製本するという贅沢なものだ。職人たちが後に引き継ぎたい最高の技術を駆使したという意味がある。それは紙の本がどうすれば生き残るのかを考えるヒントになると思う。最もすごかったのは鳥海さんの書体づくりだった。手で書くのもすごいし、その後の修正作業もすごい。本はモノなのだなあと改めて思う。2019/03/12
tototousenn@超多忙につき、読書冬眠中。
13
☆5.5 「文字」があって文章が読める、当たり前過ぎて意識していなかった。本書を読み、改めて「文字」について考えさせられた。読書好きと自負する輩ならぜひ手にとってほしい一冊だ。2020/10/17