出版社内容情報
哲学者の議論を「的外れ」とする科学者と、科学者の視野の狭さを指摘する哲学者による、妥協なき対論の新版。新規対談を収録。
内容説明
「哲学者という人たちが、こんな的外れでナンセンスな議論をしているなんて、開いた口がふさがらない。」一人の物理学者が感じた哲学への猛烈な憤りから始まった、予定調和なき応酬。不満や疑念をもとにした徹底的な議論を通して、問題の理解を深めていく。学問とは何か、自然科学を専門外の人が語る意味は何か、研究の価値とは何か…
目次
はじめに 科学哲学と科学の間の埋めがたき違和感
第1章 科学者が抱く科学哲学者への不信
第2章 ツッコミながら教わる科学哲学
第3章 哲学者の興味の持ち方
第4章 科学者の理解しにくい科学哲学的テーマ1―因果論とビリヤード
第5章 科学者の理解しにくい科学哲学的テーマ2―実在論と反実在論をめぐる応酬
第6章 答えの出ない問いを考え続けることについて
第7章 科学哲学の目的は何か、これから何を目指すのか
終わりに 気の長い異分野間対話のために
増補対談 終わりなき対話のその先で
著者等紹介
須藤靖[ストウヤスシ]
1958年、高知県安芸市生まれ。東京大学大学院理学系研究科教授
伊勢田哲治[イセダテツジ]
1968年、福岡県福岡市生まれ。京都大学大学院文学研究科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ころこ
38
須藤(理系)が自分の体験を一般化していて飛躍があり、コミュニケーションにクセのある方なので、理系的な言葉を表面的に使っていながら、かなりザ文系の饒舌体なのだというのが分かります。理系は対象を外部に持ちますが、それを思考することに否応なく人間が介在するということに先入観が入り、先入観を排しても言葉を使用し表象すること自体が、人間の可能性を限定したある観方に過ぎないことに無頓着だということなのでしょう。文系は対象が外部にあると同時に自分という内部でもあるので、再帰的な自己言及という不完全性定理のようなものを抱2021/11/05
トムトム
35
東大の宇宙物理学者と、京大の科学哲学者がガチンコの対談!後書きを見て、もう一度読もうと思いました。この本が出版されてから、東大生と京大生で議論が炎上!私は理解しようと思って読んでも、哲学者の言っていることが分かりませんでした。しかし、私と同じ意見の物理学者さんに対し「わざと分からないふりをしているのではないか」とのご意見。私にとって10対0で物理学が論理的だったのに、世間の意見は半々。ナンジャコリャ!また、時間をおいて読んでみます。2021/11/27
トムトム
25
物理学者が哲学者に「あなたの学問は今の時代に意味があるの?」と詰めていく本。一回目に読んだ時は、物理学者のいう事しか理解できませんでした。二回目は哲学を理解しようとして一生懸命読んでみました。しかし!結局哲学者さんが脳みそをどんなにしぼろうが、なにも建設的なものは生み出さないような気がしました。進歩しない、否定的、人の批判ばかり、重箱の隅をつっつく、難しい言葉で煙に巻く。だいたいクリティカルシンキングという言葉を日本語訳せず「クリシン型」とかいう略語を使っているのが美しくありません。2021/12/03
taku
17
面白いな。科学哲学に疑念、憤りを感じている物理学者と哲学者の対話。戦意を隠さない須藤さんの疑問やはっきりさせたいことはわかるし、「科学哲学には生産性のあることを望むんですよ」みたいに言いたくなるのも、この内容では仕方がないか。そこに拘り過ぎではあるが。対して伊勢田さんの理屈は腹落ちできないことがあり、議論を堂々巡りさせているように感じる。ただ、「哲学の拠って立つ価値観の共有」という言葉に、私は科学哲学を知らずに評価しようとしていたと思い返す。科学と周辺の哲学問題を扱うのだろうけど、現象を「どのようにして」2021/12/08
やまやま
14
哲学は文学として考えた方が良い部分が多いのかもしれません。一応、4類型に分類されて、論理学、倫理学、認識論、形而上学となるのですよ、というのは分かりやすく、ここで理解途絶の最難関は自然科学と形而上学になりそうな気がします。そして、結論的には物理学者の方に軍配が上がりそうなのですが、守勢の哲学者は一生懸命アウェーで懐疑を繰り返します。ビリヤードの例は因果の危うさを正に哲学的に問いますが、その問いかけは大方の人間にとっては確かに「どうでもよい」概念なのでしょう。界が違うというのはここでも強く感じます。2021/11/03