新たなる傷つきし者―フロイトから神経学へ、現代の心的外傷を考える

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  • サイズ B6判/ページ数 323,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784309247670
  • NDC分類 493.74
  • Cコード C0010

出版社内容情報

アルツハイマー病の患者、戦争の心的外傷被害者……新しい人格が、脳の損傷からつくられる可能性を思考する哲学書。千葉雅也氏絶賛!

カトリーヌ・マラブー[マラブー,カトリーヌ]
1959年生まれ。哲学者。英キングストン大学近代ヨーロッパ哲学研究センター教授。訳書『ヘーゲルの未来ーー可塑性・時間性・弁証法』『わたしたちの脳をどうするかーーニューロサイエンスとグローバル資本主義』。

平野 徹[ヒラノ トオル]
1967年生まれ。ストラスブール大学哲学部修士課程中退.仏語翻訳者。訳書にCh.ドゥローネ『ジャンゴ・ラインハルト伝』。

内容説明

過去も幼児期も個人史もない新しい人格が、脳損傷からつくられる可能性を思考。フロイト読解をとおして、現代の精神病理学における、“性”から“脳”への交代現象の意義を問う画期的哲学書。

目次

序論
第1部 神経学の下位におかれる性事象(因果性の「新しい地図」;脳の自己触発;脳損傷―神経学的小説から意識不在の劇場へ;先行段階なき同一性;精神分析の異議申し立て―破壊欲動なき破壊は存在しうるか)
第2部 脳事象の無力化(フロイトと“あらかじめ存在する亀裂の線”;心的出来事とは何か;「リビドー理論」そして性事象の自身に対する他性―外傷神経症と戦争神経症を問い直す;分離、死、もの フロイト、ラカン、出会いそこね;神経学の異議申し立て―「出来事を修復する」)
第3部 快原則の彼岸をめぐって―実在するものとしての(治癒や緩解には最悪の事態を忘れさせるおそれがある;修復の両義性 弾性から復元性へ;反復強迫の可塑性へ;偶発事故の主体)
結論

著者等紹介

マラブー,カトリーヌ[マラブー,カトリーヌ] [Malabou,Catherine]
1959年生まれ。哲学者。現在、英キングストン大学近代ヨーロッパ哲学研究センター(Center for Research in Modern European Philosophy)教授。ヘーゲルやハイデガーの存在論哲学の研究から出発、ジャック・デリダの指導の下で執筆した博士論文(『ヘーゲルの未来―可塑性・時間性・弁証法』原著1994年刊行)で取り出してみせた「可塑性」の概念を軸に研究活動を展開。2000年代以降は“脳”への関心を強め、現代神経科学の成果に照らして脳の「可塑性」の意義を分析しつつ、「物質的なもの」にもとづく精神哲学の可能性を探究している

平野徹[ヒラノトオル]
1967年生まれ。ストラスブール大学哲学部修士課程中退。仏語翻訳者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

34

8
脳損傷、アルツハイマー病、PTSDなどを精神分析の限界症例として、フロイトのテクストを脱構築してゆくような本。当初は自明であった精神分析の病因論の不毛性が、著者の念入りな読解のせいでさして自明でもなくなってくるあたり、フロイト的二元論のどうしようもない怪物性を感じてしまう。そもそも「反復強迫」というのがフロイトにとっての限界症例であった。そこからフロイトはエロスとタナトスの対立を導出。フロイトが認めようとはしなかった快原理の彼岸にこそ、脳事象(セレブラリテ)の領域が拡がっているというのが著者の見解。2016/12/14

PukaPuka

4
トラウマ治療の専門家にはフロイトが外傷神経症の概念を葬ったのは犯罪的という認識が少なからずあると思うが、ただ単にそれでもって今度はフロイトを葬り去るのでなく、脳器質疾患や神経科学の知見と合わせてよく考えてみたい人にはオススメ。ただ、一回読んだだけではすっきりしなかった。2016/09/26

またの名

3
「本書では、ひとつだけ造語を用いることをお許しいただきたい」と現代思想には珍しく言語新作をセーブし自重。性およびトラウマの心的な影響力を重視する精神分析と脳に人間的事象を還元する神経学との両言説を丁寧に確認し、両者が捉え損なう可塑性に向かう。一方で前と同じ脳と身体だが、他方で脳の物理的損傷により自己同一性が破壊されてしまう変形を説明する上で、想像界でも象徴界でも現実界でもない物質的な次元での可塑性を主張。個人(の脳と心)が全くの無に帰し得ることを訴えるも、ジジェクはそれこそが主体を構成する契機だと応答。2023/05/23

9684

3
変身論の書架に置いておきたい本。身体のなしうることを知らないというスピノザの導きをより放射状に蜘蛛の巣ちっくに研ぎ上げていけそうな高まりが来る2016/12/15

はすのこ

2
この本は難解やね。2017/01/31

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