内容説明
スキャンダラスにして壮大な廃墟をつくりあげた「宇宙人」としてのカント。従来の哲学者像を根底から変える多義的、そして革命的な気鋭のデビュー作、炸裂。
目次
序文 九龍城の建設者としてのカント
第1章 シニシズムの完成者としてのカント(批判哲学とシニシズム;去勢としての理性批判;カントのアンチノミー ほか)
第2章 決断主義と超越論的美学(欲望の倫理と自殺;自由のアンチノミー;回転焼串器の自由 ほか)
第3章 出来損ないのサイボーグ、そして構想力の革命(恩寵としての味覚;例外状況における判断力;悟性と構想力の戯れ? ほか)
著者等紹介
池田雄一[イケダユウイチ]
1969年、宇都宮市生まれ。法政大学文学部卒業。1994年、「原形式に抗して」で群像新人文学賞(評論部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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♨️
2
経験を越えた事柄については語ることができないと認めながら、行動の指針としてそれを召喚するカントの「「かのように」哲学」的な側面には、もはや目的なんてないのだ、と認識しつつもそのことと向き合わないシニシズムが存在している。誤った目的を持つ人間はその目的が幻想に過ぎなかったということを経験から学ぶことができるのに対して、目的を冷笑する人間は挫折すべきものを持たない以上嘘を生き抜くほかなくなってしまう。2023/03/23
ともすけ
2
マトリックスに関しての記述は、もう飽きるほど様々な人が言ってますからそれほど目新しさもなく、この本の種本になっているものが見えてくるとちょっとこれでいいのかとは思いますね。柄谷行人氏の弟子のようですがまったくそのような部分も感じられず。カントに関しても丁寧な説明があるわけでもなく発想が飛んでいるような気がしました。少なくとも哲学の本ではないだろうと思います。2013/10/12
NICK
2
「カントの批判哲学はシニシズムに通じる」という観点のもと、ポストモダンを読むというような内容。アンチノミーを解体するカントの手法はシニシズムらしい。純理を読んでるうちは、カントの思想を応用するなんてできるのか? と考えていたが、考えを改めさせられた。2010/08/24
またの名
1
映画マトリックスの裏切り者汚れキャラの「仮想現実とわかっちゃいるがこの快楽をやめる気はない」というシニシズムに実はカントは陥ってしまっているのでは、と主張する批評。卑近な喩えと現代思想のタームを駆使しながらジジェクもどきの分析を行う。飛躍やアクロバティックが多いのは批評の常道なので難癖をつけても仕方ないけれど、何を目指しているのか読んでいてわからなくなる不親切な書き方は正直微妙。カントを現代、日常の場面と常に関係づけて考える姿勢がGJなのにちょっと惜しい。2013/04/09
p-nix
1
ポストモダン以降のシニシズムあふれる考え方に対し、カントの批判哲学をぶつけるという一風変わった本2009/06/25