出版社内容情報
いまや共感の時代。だが、そもそも共感とは何か。自然科学の知見も参照しつつ、その思想的系譜を概説。来るべき共感のあり様も探究。
内容説明
私たちはなぜ、人を助けるのか?共感の時代、共感力、反共感論、共感疲労…。「ケア」や「利他」に、共感は必要か?科学的にみるとどうか。哲学ではどんなふうに扱ってきたか。今、どう考えればよいのか―。そもそも共感とは何なのか?現代社会のキーワード“共感”―その本質を根っこから捉え直す。
目次
はじめに いまなぜ“共感”か?
1部 共感の科学(動物も共感するのか?;共感の起源を探る―科学的研究の成果)
2部 共感の哲学(哲学者の捉えた共感と反共感論;共感とは何か―現象学から本質を問う)
3部 共感の未来(心を癒す共感の力―心のケアの原理を考える;なぜ私たちは人を助けるのか?)
著者等紹介
山竹伸二[ヤマタケシンジ]
1965年、広島県生まれ。学術系出版社の編集者を経て、現在、心理学・哲学の分野で批評活動を展開している。評論家。同志社大学赤ちゃん学研究センター嘱託研究員。桜美林大学非常勤講師。現代社会における心の病と、心理的治療の原理、および看護や保育、介護などのケアの原理について、現象学的な視点から捉え直す作業を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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テツ
27
ありとあらゆる他者に共感し、その痛みや苦しみを我が事のように感じることができる人間が素晴らしいとされる昨今だけれど、そもそも共感するってそんなに良いことばかりだったっけという疑問から、その功罪を解説し、社会の中で生きていくために共感を上手く利用するテクニックについて論じていく。自分とそれ以外の存在との間には決定的な断絶があるのにそれを忘れた共感ごっこを尊いものだと洗脳するから苦しむ良い子たちが生まれてしまう。誤解を恐れずに言い切るのなら、自分に負担になってしまうような共感など無理にする必要はない。2022/09/24
まゆまゆ
10
社会全体にまん延する承認不安やコミュニケーションが重視される現代において、共感が重視されている。相手の思いを汲み取り、適切な対応ができる人は共感ができる人として評価されるが、中には共感すること自体に苦しみが伴うこともある。排他的な行為にも限界があり、争いを生む一因となってしまう場合もあるが、それでも身近な人による共感は自分を救ってくれる。2022/05/24
けせらせら
5
共感について、科学的、哲学的、現象学と様々な角度から考えてみる。 共感は「ありのままの自分」が受け容れられるという実感を与えることで、不安を緩和する。 共感によって相手の苦しみの根底にある感情を理解して、相手に自己了解を促す。 共感にはリスクもある。 自己了解でき、感情のコントロールかできる、多様性に寛大、公平な価値判断ができる などできるひとは、そのリスクを回避しやすく、心のケアに向いている。 もっと本を読もうと思う。2022/10/11
Hiromu Yamazaki
2
共感が盛んに言われる時代、また(特に昨今の辛いニュースを浴びることで)共感疲労にも陥りやすい時に読みたい良本。心理学・哲学・現象学等の蓄積から<共感>が概念として整理され、丁寧に言語化されている。共感は疲労・排他性を生むリスクもあるが、協調・他者の不安緩和等の十分な効果があり、社会規範が持つ欠陥を補いうる。どうしても子どもの成長環境が重要なキーワードとされてしまうため、そこは別のストーリーが本来は欲しかったが難しいか…。2022/05/15
雫
1
共感とは流行りのエモーショナルなものではなくて歴史的に多大な関心(と情熱)を集めている生体機能だと分かった。読み切れたのはページの左上に章題があったからで、装丁の偉大さも実感した。2023/05/11