出版社内容情報
古代の奴婢から現在のLGBTSや「地名総鑑」問題まで網羅。質疑応答の形でわかりやすく綴る、初心者向け差別の日本通史入門編。
内容説明
40のテーマで考える日本の差別の根本問題。一からみんなで考えなおすために、もっともふさわしい著者による入門編。「守戸」から「地名総鑑」問題まで、いま知りたい話題をしっかり解説する。
目次
1 平城京と平安朝の下層民(古代日本の奴婢とはどういうものですか。;「五色の賎」とはどういうものですか。 ほか)
2 武家政権下の下層民(武士はひくい身分に置かれたのですか。;白山神社は賎民に信仰されたのですか。 ほか)
3
徳川政権下の下層民(身分差別とはなんですか。;江戸幕府は「士・農・工・商・穢多・非人」の上下関係を明文化したのですか。 ほか)
4 近代社会の下層民(「解放令」とはなんだったのですか。;「新平民」はなぜ差別呼称なのですか。 ほか)
著者等紹介
塩見鮮一郎[シオミセンイチロウ]
1938年、岡山市生まれ。河出書房新社編集部を経て、作家に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ばんだねいっぺい
33
やはり、司馬遼太郎的な「土地と日本人」が身分の根幹を成し、網野善彦的な「街道の者たち」が思っている以上に活躍していた社会だったと思いを強くした。「LGBTQ」には「IA」だけじゃなく、もっと加わるそうだ。非常に勉強になる一冊だ。2022/05/06
tama
10
図書館本 著者・と著者を評価する新日本文学会をwikiで調べたが、なーんだ、という内容だった。この本自体「よくわかる~」みたいなもので浅く広く(しまいには日本史ですらなくなる章も)。渡し守も賤民の仕事だったのは知らなかったし、岡山の賤民たちが部落ごと「北海道へ」移住させられた、とあるから、そのせいだったのねー。賤民として扱われた理由の一番古いのは、定住しない(できない)仕事内容と、定住しててもケガレ仕事を非とする信仰(神道辺りからかな)のせい、そして征服されたから、と読んでて思った。2022/07/14
田中峰和
7
差別を興味本位で取り上げる情報も多いが、本書は学術面で解説されるので安心。士農工商の次に穢多非人と続くが、穢多は武士から派生。皮つくりの人々から容姿のいい若者を選び、罪人の処刑にあたらせたという。対して非人は街道にたむろする物乞いに困った商人たちが、清掃の役を与えたことから始まった。また、サンカと呼ばれる人々は、戸籍をもたない自由民であった。当時、徴兵忌避の人々が山間部に逃れ、サンカの集団に紛れ込むのを防ぐため、戸籍のないサンカを凶悪な犯罪者に仕立て上げられてしまった。いずれも支配階級が作った差別構造だ。2022/03/13
よしじ乃輔
7
差別に関する問いに答えるQA式。40の質問は多数が疑問に感じているものが多く、中には日本だけでなく海外やLGTBに対してのものも取り上げられていました。差別という側面を時代別に記した日本通史。2022/03/08
わ!
3
大変失礼ながら、著者の塩見鮮一郎さんがこんなにお元気に第一線で活躍されているとは思わず、この本が出版されたのを見つけた時、てっきり復刻版だと勘違いしていた。「差別の日本史」となっているものの、編集者側が用意した40問の質問に対して、塩見さんが答えてゆくというもの。もちろん質問の内容によって答えの量と内容に偏りがあるが、おそらく現在考えられる限り、ほとんどの「差別」的概念が網羅されていると思われる。これらの問題に対して長い間取り組んでこられた著者の考え方がとても自然体で書かれていて素晴らしい。2022/06/16