出版社内容情報
柳田国男に『遠野物語』を語り伝えた佐々木喜善が、自ら集め自ら綴った、遠野周辺の不思議な話。新装版。
内容説明
“日本のグリム”が残した、もう一つの『遠野物語』。いまなお私たちを驚かす怪異譚の数々。
目次
1 山の怪異を伝える
2 遠野郷の狼を語る
3 猟師たちが自慢する
4 村の噂を話す
5 東北の文化を掘る
6 新しい伝説を集める
著者等紹介
佐々木喜善[ササキキゼン]
1886~1933年。岩手県西南閉伊郡栃内村(現・遠野市土淵町)に生まれる。上京して哲学館、早稲田大学に学び、文学に志す。柳田国男に語った遠野の伝説が『遠野物語』になった。その後、病気で郷里に帰り、民俗の研究を続けた
石井正己[イシイマサミ]
1958年、東京生まれ。東京学芸大学教授。日本文学・日本文化専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ワッピー
37
「遠野物語」を柳田国男に語った佐々木喜善が中学生向けに連載した遠野風物詩。一部、遠野物語と被る話もあるが、峠の不思議、天狗ばやしやマヨイガと縁のある桐の大群生、狼や猿との攻防、名人マタギといった定番の話から、村に流布したうわさ話、飢饉時代の哀話、家に住む霊たち、偽汽車、腰湯、満州事変に際して村の神々の出陣など当時の生活感あふれる話を記録。病み狼が人を襲い、噛まれた人は狂死したという狂犬病の蔓延を伝えていたり、家霊の比較として中国・韓国・ロシア・アイヌの伝承にも言及していたり、興味は尽きません。おススメ。2020/08/20
彼岸花
23
「遠野物語」刊行から一世紀。民話のふるさとは、多くの人々に親しまれ、現代も読み継がれています。本作品は、これまで収録されていない話でした。三峰の伝説から始まり、人々の自然との闘い、動物との共存、神々への信仰、(御神立は特に幽玄でした)貧困が招いた悲劇の顛末など、切実に語られています。人名、住所の記載があり、現実に即した、社会現象の一端だと確信しています。民俗学に触れることにより、遠野という地の古き歴史を知り、風習を学び、新たな発見に繋がります。空前の口頭伝承の形態として、文化的価値の高さを実感しました。 2020/06/07
スイ
15
遠野で語られる様々な話を集めてある。 動物、物の怪の話もあれば、猟師や郵便配達員など地域をよく知る人特有のもの、飢餓の惨状などもあり、実際の生活から精神的な面まで聞く(もちろん読んでいるのだけど、聞くというのがしっくり来る)ことができる。 解説も興味深かった。2021/03/25
sayzk
9
遠野物語のあの「佐々木鏡石君」の著作があったとは知らなかった。その佐々木氏が集めた物語集。遠野物語と一味違うのは昔話だけでなく佐々木氏とリアルタイムで新たに生まれた話が集められているのが印象的。”見世物”のレポートがあって、”偽汽車”が走り、満州事変に神々が出征する! なんか都市伝説が生まれるのはいつの世も同じ、というような気がした。 もちろん、天狗や河童も登場。野生動物とは「ふれあい」なんてなまぬるいものでなく、人間界から獣の領域に入っていく。今と違って自然保護なんてもんじゃない。2021/07/18
belier
3
遠野物語の話を柳田国男に伝えた人が書いた本。遠野物語と重なっているが文体や語りが異なる話もあれば、まったく雰囲気、内容が異なる話もある。民話的で不思議な話も多いが、現実的で普通にあってもおかしくない話もある。いずれにしても口語体だし素朴な味わい。ただ最終章、満州事変のときに、日本軍を守護するために家々の氏神たちが満州に御神立するのが流行したというお話は、民俗学ではなく社会心理学的な現象に思えた。やれやれ。2022/02/28