出版社内容情報
ペ・ミョンフン[ペ ミョンフン]
著・文・その他
斎藤 真理子[サイトウ マリコ]
翻訳
内容説明
犬の俳優Pの謎、愛国の低所恐怖症、デモ隊vs.インド象、大陸間弾道ミサイル、テロリストの葛藤…。韓国SFの金字塔にして笑いと涙の摩天楼エンタテインメント!
著者等紹介
ペミョンフン[ペミョンフン]
1978年釜山生まれ。ソウル大学外交学科、同大学院に学ぶ(専攻は第一次世界大戦)。2005年に「スマートD(Smart D)」で科学技術創作文芸コンクールに当選し作家デビュー。以後、韓国SFを代表する作家の一人として活躍している。10年に「若い作家賞」を受賞。12年に「サイエンスタイムズ」で「韓国SF作家ベスト10」に選出
斎藤真理子[サイトウマリコ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
121
読んでいくうちに、日本の女性芥川賞作家の作風と似たものを感じた。674階建ての巨大摩天楼に関わる人と事件は村田沙耶香、今村夏子、李琴峰あたりが書いたと言われても納得しそうなクレージーさで展開する。高層ビル内だけで完結した世界に生きる人びとの頭脳と精神が少しずつ変質して正気と狂気の境界線をさまようようになっていくのは、自称ハイテク先進国ながら技術だけが歪に発達した現実に耐えられなくなっている韓国人のメタファーなのは明らかだ。SF小説というよりも、人の心は科学の発展に耐えられるかこそが作者のテーマではないか。2023/10/17
buchipanda3
108
韓国SFの連作集。主役はビーンスタークと呼ばれる674階建ての巨大タワーで、国として機能するその中に住む人たちの人間模様が描かれる。奇妙な設定だがユーモラスにテンポ良く読ませる文章の先に見えてくるのは、政治も経済も社会も巨大化と集中とつぎはぎで修復困難な歪みが凝縮された皮肉の効きまくった世界。ただ、一見するとバベルの塔のように崩壊しか道はないと思わせながら、著者が見せるのはむしろ人が本来持っている情感への期待の強さ。この合理性の塊の中でも青いポストのようなものがもたらす心情が息づいていることなのだと思う。2022/12/13
ヘラジカ
53
発想と技術、そして遊び心が遺憾なく発揮された魅力満点の韓国SF。設定だけを見ると目新しさは感じられないが、作り上げた舞台のなかでギミックを操る力、内容に合わせて語りを変える多彩さによって新鮮で読み応えのある作品になっている。連作短篇集として読むにしても、”タワー”を主役に見た長篇小説として読むにしても、付録を除けば最後を飾る「シャリーアにかなうもの」が締めの一作に大変秀逸。ページを捲り始めれば一気に読んでしまうほど面白い作品だった。韓国の社会派小説を読みたい人にも絶対お勧めの一冊である。2022/09/26
おたま
49
地上674階、50万人の人間が集まっているタワーであり、独立国家でもある「ビーンスターク」。その中で起こる不思議な、かつ人間的なドラマを描いた連作短編集。権力を持つ犬、悟りを開く象、高層階と低層階を繋ぐ錯綜したエレベーター群等、摩訶不思議な世界が繰り出されてくるが、そこに関わってくる人間たちは本当に人間くさく、失敗もすればヒューマンな行いもする。不思議な物語に託して韓国社会への風刺も感じる。人気の高いと言われる『タクラマカン配達事故』がやはり一番心に残った。作者ペ・ミョンフンの長編小説も読んでみたい。2023/09/13
山口透析鉄
30
市の図書館本で。 ちょっと不思議な連作集で、日本の短編まんがでも、延々と塔を上る話を読んだ経験を思い出したり、学生時代に読んだヤン・ヴァイスというチェコの小説家が書いた「迷宮1000」を連想したり、でしたね。 タワーそのものがあまり変わらず存在し続けるようですが、中では確実に色んな人物とかの生活もあり、たたかっている人もいるのでしょうね。 犬の俳優の話とかも巧みでしたね。 割とさっくり読めて、まだまだ続きを読みたくなってしまいましたね。韓国SFはお初でしたが、けっこう良かったですね。2023/03/19