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出版社内容情報
スペインの片田舎で、時代に取り残された者たちの宿命的な物語の数々。名翻訳家による傑作短篇集。
内容説明
名作『黄色い雨』の著者による集大成。世界の片隅への愛と共感が魂を震わせる珠玉の21篇。
目次
1 僻遠の地にて(冷蔵庫の中の七面鳥の死体;自滅的なドライバー;腐敗することのない小説;夜間犯罪に対する刑の加重情状;遮断機のない踏切;父親;木の葉一枚動かんな)
2 いくら熱い思いを込めても無駄骨だよ(ジュキッチのペナルティー・キック;マリオおじさんの数々の旅;世界を止めようとした男の物語;姿のない友人;いなくなったドライバー;行方不明者;依頼された短篇;尼僧たちのライラック アレハンドロ・ロペス・アンドラーダに;ラ・クエルナの鐘;暗闇の中の音楽;夜の医者;プリモウト村には誰ひとり戻ってこない;明日という日(寓話))
3 水の価値
著者等紹介
リャマサーレス,フリオ[リャマサーレス,フリオ] [Llamazares,Julio]
1955年、スペイン北部のレオン県ベガミアン村で生まれる。マドリッド大学法学部を卒業後、弁護士、ジャーナリストを経て、詩人、小説家として活動をはじめる
木村榮一[キムラエイイチ]
1943年、大阪市生まれ。神戸市外国語大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アン
98
『黄色い雨』が印象的なリャマサーレスの多彩で味わいのある短篇集。『僻遠の地にて』殻に閉じこもる父親の心を開く友人「木の葉一枚動かんな」、トラックに乗り込み焦燥に駆られる「自滅的なドライバー」ブラックなユーモアが効いた作品が多く不思議な余韻。『いくら熱い思いを込めても無駄骨だよ』癌を宣告された男の忘れ得ぬ思い出と決心「マリオおじさんの数々の旅」、スペイン内戦の傷跡の深さ「行方不明者」、ゲリラ兵士の救急箱の秘密「夜の医者」が好き。失われゆくものへの愛惜の念や生きることの切実さを見守るような眼差しに包まれて。 2022/07/09
(C17H26O4)
82
三部構成。13作品からなる第二部がよかった。スペイン内戦、鉱山、忘れられた土地の寂寥感。既読作を思い起こさせるものがいくつかあった。特に印象に残ったのは「行方不明者」。行方不明のおじの名前がアンヘルということもあり『狼たちの月』のラストと繋がっているように思えた。短篇でなく中篇、長篇で読んでみたいようなものも。第一部はブラック・ユーモアを感じる7作品。第三部は1作品のみ。2022/06/03
ヘラジカ
56
『黄色い雨』を読んだのはかれこれ10年近く前。細部はよく覚えていないものの、圧倒的な存在感を持った傑作だったことだけは記憶している。それ以来のリャマサーレスなので刊行前から非常に楽しみにしていた。起承転結がしっかりしたお手本のような短篇が多く「唸るような傑作」とまでの作品はないが、掌篇に至るまでどれもクオリティは非常に高い。テーマや作風ががらっと変わる後半は『黄色い雨』に通ずる、一種”荘厳さ”を感じさせる哀愁を帯びた作品も多かった。ちなみに『黄色い雨』に併録されていた短篇二篇も収録されている。2022/05/27
フランソワーズ
27
締め切りが迫っても書けない小説家を主人公にした一編の中で書かれている「孤独、忘却、生と死にまつわる神秘」。それにスペイン内戦の傷痕_。これがリャマサーレス世界の主要テーマ。そしてそれを創作に昇華させる彼の表現は簡潔でありながらも、詩的。おかしさともの悲しさがないまぜになって、思わずため息がもれてしまうほどの読後感に包まれます。そしてやっぱり、わたしはリャマサーレスが大好き!(中でもお気に入りは、『遮断機のない踏切』、『木の葉一枚動かんな』、『暗闇の中の音楽』です)。→2022/08/26
のりまき
26
ちょっとしたことがどんどん自分を追い込んで行く『自滅的なドライバー』『夜間犯罪に対する刑の過重情状』のような作品が好きだ。『マリオおじさんの数々の旅』はせつなすぎる。『依頼された短篇』『遮断機のない踏切』も好みだな。2022/07/26