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出版社内容情報
プラハで日本文学を学ぶヤナと、透明になって渋谷を彷徨うヤナの「分身」。ふたつの物語が街をつなぐ、新世代幻想ジャパネスク小説!
内容説明
プラハの大学で日本文学を専攻するヤナは、ゴスロリと忍者が闊歩する学部で謎の作家・川下清丸の小説にのめりこんでいる。そのとき渋谷では「分裂」した17歳のヤナが単語帳片手に幽霊となって街に閉じ込められていた。鍵を握る謎の作家の秘密とは?日本文学フリークたちの恋と冒険の行方とは。チェコ文学新人賞を総なめにした作家による、ふたつの街が重なりあう次世代ジャパネスク小説。マグネジア・リテラ賞、イジー・オルテン賞受賞。
著者等紹介
ツィマ,アンナ[ツィマ,アンナ] [Cima,Anna]
1991年、プラハ生まれ。カレル大学哲学部日本学専攻を卒業後、日本に留学。本書で2018年にデビューし、チェコ最大の文学賞であるマグネジア・リテラ新人賞、イジー・オルテン賞、「チェコの本」文学賞を受賞
阿部賢一[アベケンイチ]
1972年生まれ。東京大学文学部准教授。著書・訳書多数
須藤輝彦[スドウテルヒコ]
1988年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程。ミラン・クンデラを中心に、チェコと中欧の文学を研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
100
ディストピアでも、幻想でも、SFでもないポップなチェコ文学がやってきた!チェコ文学で「占星術殺人事件」の字を拝めるとは予想もしてなかった(笑)文学少女、ヤナは川下清丸という日本人作家にのめり込む。一方、彼女の日本への憧れとも言える分身は7年間、渋谷から出られず、彷徨っていた。プラハでの(肉体を持つ)ヤナと後、川下清丸の短編も読めるので一粒で二度、美味しい構造になっています。そして生身のヤナを描いた「プラハ」章と思念体としてのヤナを描いた「渋谷」章。二つが一点を通して縒り合わさっていく展開はベタだが、唸る。2021/06/29
Vakira
66
ふと日本語の「体」という漢字を連想する。古くは魂がないものを「からだ」といい、魂を宿したものが「身」であった。「イ」(人偏)に「本」と「体」と書く。身体は本で出来ている。なんでこの本からこんな事を思ったのか?魂の幽体離脱と無名日本人作家作品の翻訳。主人公チェコの女子学生クプコヴァーちゃんの研究と体験。本=書は過去に存在した人の存在の証。書を読むことでその人の存在が蘇る。それが小説だとしても。そして人偏の方の魂は渋谷へ飛ぶ。ハチ公はクプちゃん離さない。かくしてチェコ、渋谷、明治の3つの物語が同時進行。2021/10/25
たま
46
日本文学の大学院生ヤナはプラハで川下清丸という作家を研究中だが、高校生で日本に来た時以来〈分身〉が日本に残っている。言葉が分からず地理が分からず渋谷から出られない、透明人間になっている分身の経験が外国体験としてリアルで面白い。作中作として提示される清丸の小説も最初の場面がよく出来ていて、昔の岩波ふう活字や関川夏央も楽しく実在の作家かと思ったほど。恋愛の描写もよく出来ているが、どこか違う。戦前男性作家の恋愛の書き方を真似ているが、どこかが違うと感じた。ヤナも恋愛するがこちらは真っ直ぐ。2022/01/27
川越読書旅団
45
渋谷風に言うとこの作品「ヤバい」。勢いで購入して読んでみて、こんな素晴らしい作品に出会えるなってびっくり。著者の日本文学の精通っぷりに感動を憶えつつ、時空と空間を飛び越えて展開するストーローに最後まで釘付けで一気に読了。しかも、川越まで足を運んで頂いたようで、感謝。早速、今後注目の作家さんリストへ。2021/10/02
tetsubun1000mg
32
日本の大学へ留学したチェコの大学生が書いて、チェコで新人賞や文学賞を取った作品との帯タイトルで選ぶ。 前半は主人公ヤナ・クプコヴァーの学生らしい会話と日常が描かれ、時々プラハとシブヤと舞台が変わりヤナが研究する「川上清丸」の小説が挿入されたりと読むのに集中しにくいのだが、中盤からはだんだんと面白くなってくる。村上春樹のファンタジー小説の雰囲気の文章だが、若さが勝っているように感じた。終盤でこれまでの出来事がぴっちりとハマってくる構成は驚きでもあった。しかも作中の小説はオリジナルとは気が付かなかった。 2021/07/27