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出版社内容情報
夫を殺したのは親友の息子? バスクを舞台にごく普通の二つの家族が「愛国心」のもとに引き裂かれていく。大ベストセラー。
内容説明
“なぜ人を殺すより謝罪するほうが難しいのだろう”残された家族の苦悶を描きスペイン国民文学賞、欧州文学賞などヨーロッパ各国で受賞多数、HBOでドラマ化された問題作、ついに邦訳刊行!
著者等紹介
アラムブル,フェルナンド[アラムブル,フェルナンド] [Aramburu,Fernando]
1959年バスク州サンセバスティアン生まれ。85年よりドイツ在住。幅広い執筆活動で受賞も多数ある。2016年に刊行した9作品目の『祖国』で国民小説賞、バスク文学賞ほか数々の文学賞を受賞、またイタリアほか欧州圏で大ベストセラーとなり、文学的話題になった
木村裕美[キムラヒロミ]
翻訳家。訳書多数。マドリード在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アン
103
ETAが武装闘争の完全停止宣言をした2011年10月にはじまる物語の語り手は2つの家族9人。それぞれのバスクにおける人生の歩み、自身の家族ともう一つの家族へ向けた心情が精緻な構成によって紡がれ、確執から生じる痛みや葛藤が胸に迫ります。愛する祖国の誇りと母国語、抑圧や自己犠牲、愛憎や悲哀。テロ事件を通し家族の在り方を見つめ、一筋の光を求め謝罪を望むビジョリの揺るぎない信念、障碍を抱えたアランチャの努力や寛容さも強く心に残ります。赦しと未来への祈り。眩い陽光が降り注ぐラストシーン…静かな深い余韻に包まれて。2021/10/25
ヘラジカ
57
後半も時間の流れは行きつ戻りつ、過去も現在も”あの日”の周辺を巡りながら人々の生は進む。厳しく辛い物語ではあるが、二つの家族の行く末に目が離せないまま没頭する読書だった。緻密にして丁寧な人物描写、ナショナリズムと個々人の欲求や不満、愛憎が結びつく様を巧みに描きながら、決して最期には嫌な気持ちにならないと信じられる優しさに満ちている。国同士の戦争や民族に対する迫害とはまた違った世界や時代が存在したことを知る貴重な読書でもあった。ラストの美しさ、ホシュマリの手紙には思わず涙が……。傑作。2021/05/01
かもめ通信
25
物語は125の章に細かく区切られ、各章ごとに語り手が代わり、時系列に並んでもいない。2家族9人の語り手がそれぞれの視点から「祖国バスク」と自らの人生、そして自分と分かちがたい自らの家族と、もう一つの家族について断片的に語っていくのだが、そうした「かけら」を集め、積み上げていくことによって、様々な事柄が明らかになっていく。ぐいぐい読めるが、読み終えた今も、あれこれと考えずにはいられない。そんな作品でもあった。2021/07/19
ori
3
力強く圧倒的。素晴らしかった。強行テロを繰り返すETAに対し反対意見を述べたり寄付を拒否すればテロのターゲットに狙われてしまうため村民が精神的に支配され閉塞的な村。バスクを愛するという思いは同じはずなのに。愛国とは?暴力と正義とは?考えてしまう。家族それぞれにも様々な意見と思いがある。壊れたかけらを拾うように少しずつ前に進む。昔と同じには戻れない。謝罪とは?贖罪とは?許しとは? 「時間を戻すことができるなら、そうしたい。だけど、できません」 この言葉の強さ。2022/11/01
けい
2
そもそも、民族としての固有の文化を守るための運動が、なぜ政治運動になってしまうのか。 大きな声の過激な思想に若者の熱情はたやすく呑み込まれてしまう。 気づいたときには戻れなくなっている。 自分は正しいことを行っている、と思いこむために、誤ったことを重ねていく。 知らないということは恥ではない。間違えを認めることは負けではない。 どうか、立ち止まる勇気を持てますように。2022/05/02