出版社内容情報
『帰ってきたヒトラー』の著者が6年の沈黙を破ってついに発表した問題小説。数年後の欧州、閉じた国境と難民の間で何が起こるのか?
内容説明
15万人のアフリカキャンプ難民が2倍に膨れてドイツへなだれ込む!ドイツからキャンプに天使がやってきた。無謀なアイデアが現実になっていく。
著者等紹介
ヴェルメシュ,ティムール[ヴェルメシュ,ティムール] [Vermes,Timur]
1967年、ドイツのニュルンベルクに生まれる。母親はドイツ人。父親はハンガリー系移民。大学卒業後、大衆系タブロイド紙の記者として働き、ゴーストライターとして複数の本も執筆。2012年に、初めて自分の名前で発表した小説『帰ってきたヒトラー』は、ドイツ作家の処女作としては過去100年のうち、もっとも大きな成功を収めた
森内薫[モリウチカオル]
翻訳家。上智大学外国語学部卒業。2002年から6年間ドイツ在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
192
上・下巻、700頁弱、完読しました。本書は、詩人ハイネの作品から引用したタイトル、痛烈な批判、近未来難民社会風刺小説でした。難民問題は、大国の後進国に対する搾取、貧富の差、戦争等に起因するものだと考えます。先進国が勝手な自国のナショナリズムを主張している限り、絶対解決しません。理想論だとは思いますが、世界連邦の創設および富の適正な再分配を希望します。 しかし難民に不馴れな日本に40万人が押し寄せたら大パニックになるでしょうね(苦笑) http://web.kawade.co.jp/bungei/3595/2020/07/26
雅
55
やっぱりそうなるか!と思えるラスト。ハッピーエンドは難しかったか⁈重たい社会派小説でした2021/01/10
ヘラジカ
50
ドイツまで整然と着実に歩みを進めていく難民の膨大な行列は、ヨルムンガンドや出エジプト記といった神話的モチーフを想起させる。当初抱いていたコミカルなイメージは雲散霧消し、ドイツ世論が緊迫感を強めていくにつれ、小説全体のトーンも重くシリアスになっていく。待ち受ける結末がどんなものか気になって一息に読んだが、思った以上に壮絶な展開に少しばかり呆然としてしまった。あり得るシナリオなのかもしれない。コメディどころか暗い気分になる社会派小説だった。作者前作も時間があるときにいずれ。2020/06/09
星落秋風五丈原
24
いやなんとも陰惨なラストになってしまった。2020/08/18
はる
9
難民問題がテーマのこの作品。難民に当たり障りなく対応したい国とそこに資金を拠出する最大国家ドイツ、メディア業界、良心的に捉える者と正反対に考える者の国境をめぐる行動が欧州に衝撃的な結末を与える。コロナに隠れて見えないけれど現代社会の近未来的病理かもしれない。主人公の一人がNATO加盟国に到着し呟いた。「トルコの農民は何故もう一頭(余計に)飼わないのか?何故この国は自分の国より暮らし向きがいいのか?でも内戦やクーデタや飢饉がなければ二人で一頭の牛を飼うだけで食べて行けるのかもしれない。」 2020/07/04