出版社内容情報
ウサギを父親だと信じる子供、レアキャラ獲得のため戦地に赴く若者、ヒトラーのクローン……奇想と笑いと悲劇が紙一重の掌篇集。
内容説明
奇想とリアル、笑いとシュールが紙一重のケレットワールド。ウサギになったパパ、サーカスの人間大砲、戦場に現れるピトモンGOキャラ、脱出ゲーム「銀河の果ての落とし穴」…語りの名手の最新短篇集。
著者等紹介
ケレット,エトガル[ケレット,エトガル] [Keret,Etgar]
1967年イスラエル・テルアビブ生まれ。兵役中に小説を書き始め、短篇集『パイプライン』(1992)でデビュー。『突然ノックの音が』(2010)はフランク・オコナー国際短篇賞の最終候補となる。絵本やグラフィック・ノベルの原作を執筆するほか、映像作家としても活躍。2007年には『ジェリーフィッシュ』で妻のシーラ・ゲフェンとともにカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を受賞している。テルアビブ在住
広岡杏子[ヒロオカキョウコ]
英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)、ヘブライ語・ユダヤ学部卒業。エルサレム・ヘブライ大学ロスバーグ・インターナショナルスクール修士課程在籍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
120
泣く時にでる成分が心を癒すなら、この短編達は救いだ。「兵役中に友人の自殺を経験して書き始めた」と後書で知り腑に落ちた。ネジがひとつハズれて、ボタンを少しかけ違えた頭ん中では、自分たちだけの幸せがある。本当はとても不幸な状況なのに。 パパは出ていったのにおうちにいるウサギをパパだと思って大事にするむすめたち、耐えられないほど痛々しく自分たちの論理を持つ少年兵。大砲から飛ばされてイカすと思うサーカスの男。そして、1番気になるのは、彼女がハッパなしにイエスと言ってくれたのかってこと。返事を待つ幸せが伝播してきた2020/04/10
アン
105
『あの素晴らしき七年』が印象的で。著者はイスラエル生まれでテルアビブ在住、両親はホロコーストの体験者。その背景が作品に影響を与え、逃れ得ない現実を経験した上で生まれた物語であると言えるでしょう。アイロニーが効いた風変わりな光景には何処か哀愁が漂い、「自分の内側」にユーモアを見つけ、しなやかに生きようとする著者の想いが伝わってきます。メールのやり取りが本文中に挟まれ、遊び心が覗く構成の表題作、息子への愛情が温かい「レジはあした」、遊歩道で男女が落ち合う「パイナップルクラッシュ」がお気に入り。 2019/12/19
榊原 香織
83
イスラエルの作家 ショートショート。 SFではない。やや不条理感はあるが割とリアル。 ところどころ、やっぱりイスラエルなんだなあ、と思うけど、違和感はさほどでもない。 ポケモンGoみたいなので、戦場にしか出ないモンスターが希少価値、て、発想が中近東ぽい。これは日本じゃ出ない発想 ヘブライ語原書からのジカ訳2021/09/18
アキ
71
ウサギがひくひく鼻を動かしている。パパがやってきてくれた。嬉しがる3人の娘たち。ロビーのパパもウサギちゃん。パパ同志仲がよさそう。「父方はウサギちゃん」のユーモアあふれる不思議な世界。「地獄の果ての落とし穴」などイスラエルの作家だけあって短編の中でホロコーストや聖書に関わる話が多いと感じた。「パイナップルクラッシュ」で夕陽を見ながらハッパをやり、キスまでしたアキロブのためにココナッツを木から落とす別の男に嫉妬する気持ちがやるせない。この本がテーマの先月のToi booksの読書会。想像するだけで愉しそう。2019/12/20
らぱん
65
ぶっ飛んだ短編集でかなり好きなカンジだ。ポップでグルーヴ感のある文体で過激なことをやっている。 政治色が強い主題を軽いノリで突っ込んでいき、敵も味方もばっさばさとぶった切る。返す刀で自分も血を流しながらうっかり笑っちゃう逞しさがいい。 登場人物は、屋上から飛んだり大砲で飛ばされたり、ジョイントでぶっ飛んだりぶっ飛ばされたりする。それが市井に生きる普通の人たちの話であり、舞台が戦場のときもあるが、それもまた庶民の日常だというのがイスラエルだ。 耐え難い現実を生き抜くサバイバル的指南書。面白かった。↓2020/03/14