出版社内容情報
秘密の隠れ家で身を売る14歳の少女の祖母の支配からの脱出を描く表題作のほか、リアリズムと奇想と豊かな物語性に満ちた作品集。
内容説明
表題作のほか、「大佐に手紙は来ない」「この世で一番美しい水死者」「光は水に似る」など10篇を精選。世界文学最高峰を瑞々しい新訳で。
著者等紹介
ガルシア=マルケス,ガブリエル[ガルシアマルケス,ガブリエル] [Garc´ia M´arquez,Gabriel]
1927年コロンビアのカリブ海沿岸地方の内陸にある寒村アラカタカに生まれる。20世紀後半の世界文学を代表する作家。ジャーナリストとして各地で仕事をしながら小説を執筆し、55年長篇『落葉』で作家としてデビュー。またローマの「映画実験センター」でも学ぶ。61年に中篇『大佐に手紙は来ない』、62年に長篇『悪い時』と短篇集『ママ・グランデの葬儀』を発表し、高い評価を得る。67年、世界文学の記念碑的傑作『百年の孤独』を発表し、「ラテンアメリカ文学のブーム」を主導する
野谷文昭[ノヤフミアキ]
1948年神奈川生まれ。東京大学名誉教授。ラテンアメリカ文学研究者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
113
再読。昔は表題作が一番、印象深かった。でも大人になった今は「大佐に手紙は来ない」が沁みる。過去に行った事への誇りと執着、現実にそぐわない処世術、引き伸ばされる当てのない期待、そして自ら動かずに待ち続ける事の狡さ。自分が人生で取ってきたことが丸裸にされたかのような恐れをこの作品で感じた。この作品は『タタール人の砂漠』、『城』と並ぶ恐ろしい作品だと思います。「ついにこの日が」は一味変わった復讐譚に南米の情勢の不安定さを抉り出す。そして「この街に泥棒はいない」は『予告された殺人の記録』の雛型となったのかな。2021/02/17
buchipanda3
107
コロンビア出身作家の中短編選集。初期から後期までの作品が網羅されており、ガルシア=マルケスが紡ぎ出した数々の物語の魅力を一気に味わえて面白く読めた。というか著者にハマった。南米やスペイン、イタリアなどの小説を読むと感じる気取りのなさが好き。合わせて、人間味が熟成され、哀感のある現実的な人生の中に垣間見せるユーモアも。本作でもその感覚に取り込まれ、さらにクセのあるリアルな人物描写や思わずハッとなる比喩など著者の語りの魔術に惹き付けられた。大佐の話のラストが印象深い。そして光を水に見立てた物語が微笑ましい。2021/06/04
ヘラジカ
50
既訳の短篇集から選出された新訳のアンソロジー。『エレンディラ』しか読んだことがなかったので読了済は三作品のみ。それも恐らく10年以上前に読んでいるため、訳文の違いは正直に言うとよく分からなかった。ただ、読みやすかったのは間違いない。上記三作以外の初読みで気に入ったのは『ついにその日が』『聖女』『光は水に似る』。"精選"と言うだけあってどの作品も強烈なインパクトを残し、ガルシア=マルケスを少しでも感じることができる良アンソロジーだった。解題や編訳者解説も充実しているのでこの作家の入門にも最適だと思う。2019/08/24
yumiha
43
ガルシア=マルケスの長編は2冊読んだが、短編は初めて。表題作は、ものすごかった。エレンディラもその祖母も、日本の小説ではお目にかかることのないキャラクターだった。登場する男たちが皆小粒に思えるほど強烈‼️そう言えば、『百年の孤独』のウルスラや本書の「火曜日のシエスタ」の母親も、周囲に全く左右されない強さを持っていた。南米の女性は強い⁉️2022/10/14
元気
33
初ガルシア=マルケス。全10編の精選短編集。「大佐に手紙は来ない」…不安定な政情下によって恩給の通知が訪れないままの退役軍人と妻。読んでいて「ゴドーを待ちながら」を思い出したが、待ち望んでいる対象もそれが来ないこともこちらは断言され、本編も貧困と諦念と不安が、大佐の乾いた老体のような文章で描かれている。しかし巻末の解説にある執筆下の状況を念頭に読んだおかげか、鬱々とした気分には陥らなかった。政権の弾圧によって同じく収入を絶たれた30代のマルケスが極貧の中で執筆した本作からは、明日も知れぬなか安易な救いを2020/10/03