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こびとが打ち上げた小さなボール

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  • サイズ B6判/ページ数 357p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784309207230
  • NDC分類 929.13
  • Cコード C0097

出版社内容情報

刊行から30年、韓国で今も最も読まれる130万部のロングセラー。知られざる世界的名作がついに邦訳。解説=四方田犬彦。

チョ・セヒ[チョセヒ]
1942年生まれ。70年代より、「こびと」の連作小説で注目を浴び、78年に出版された本作で東仁文学賞を受賞。

斎藤 真理子[サイトウ マリコ]
1960年生まれ。著書に、詩集『ひびき はばたき ふぶき』、韓国語詩集『入国』など。訳書にパク・ミンギュ『カステラ』(共訳)。2015年、『カステラ』で第一回日本翻訳大賞受賞。

内容説明

取り壊された家の前に立っている父さん。小さな父さん。父さんの体から血がぽたぽたとしたたり落ちる。真っ黒な鉄のボールが、見上げる頭上の空を一直線につんざいて上がっていく。父さんが工場の煙突の上に立ち、手を高くかかげてみせる。お父ちゃんをこびとなんて言った悪者は、みんな、殺してしまえばいいのよ。70年代ソウル―急速な都市開発を巡り、極限まで虐げられた者たちの千年の怒りが渦巻く祈りの物語。東仁文学賞受賞。

著者等紹介

チョセヒ[チョセヒ]
趙世煕。1942年、京幾道加平生まれ。ソラボル芸術大学(現・中央大学)文芸創作科、慶煕大学国文科に学ぶ。65年、「京郷新聞」新春文芸欄に「帆柱のない葬船」が当選して作家デビュー。その後一〇年の沈黙を経て75年より「こびと」連作を発表し始める。78年、『こびとが打ち上げた小さなボール』を刊行。同作で79年に東仁文学賞受賞

斎藤真理子[サイトウマリコ]
1960年、新潟市生まれ。明治大学文学部史学地理学科考古学専攻卒業。80年より韓国語を学び、91~92年、韓国の延世大学語学堂へ留学。15年、『カステラ』で第1回日本翻訳大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

おたま

60
本書の訳者である斎藤真理子が『韓国文学の中心にあるもの』で紹介していた、現代韓国文学の原点的な作品。12の短編で構成された連作短編集。こうして一つに纏められると、緊密に構成たれた長編のように思える。1970年代の韓国で、その最底辺を生きるキム・ブリ、通称「こびと」と呼ばれる男を父にもつ一家の物語。前半で、「こびと」一家の貧困の中での生活や、地域再開発のための苛酷な立ち退き命令等が描かれる。「こびと」が煙突から落ちて亡くなった後、後半はウンガンという都市に一家が出て来てからを描く。2024/01/23

藤月はな(灯れ松明の火)

51
1970年代、近代化のために二束三文で土地を買い叩かれた挙句、かつての住宅を追い出され、破壊されたこびと、いざり、めくら、せむしなどの市井の人々。身体的な特徴がある彼らと学歴とコネが有利な競争社会で疲弊する人々の生き様は余りにも息が詰まるような社会を浮かび上がらせる。教師の正体が分かる場面に彼が歩んできた道を思うと頭を垂れるしかない。そして作者が「この作品は恥だ。何故なら、この本が今も読まれ続ける事は韓国社会が何も変わっていない証拠だから」という言葉に作者の無念が伝わってきて本当に遣る瀬無くて仕方なくなる2017/02/28

南雲吾朗

47
兎に角、すごい衝撃を受けた。韓国にこんなにすごい作家が居たことを今まで知らなかったのは、すごく損した気分だ。1970年代の産業成長期の韓国の話。労働者側と経営者側の格差。財閥と貧困、異形や貧困に対する差別。それらが当たり前にあった世の中がそのまま描かれている。ついつい弱者の方だけが描かれるものだが、この小説は労働者側の苦悩だけでなく、経営側の苦悩もきちんと表現されており、その点はすごいと思った。大学受験を直前にした生徒に向かって話す数学教師の言葉から物語が始まる入り口も良かった。韓国文学は力強い文学だ。2018/06/04

竹園和明

38
70年代の韓国といえば急速な発展を遂げる前夜。首都ソウルも繁華街を少し外れると雑木林と劣悪な環境のスラム街だったと聞く。そのスラム街に住む人々の暮らしぶりを通し、圧政に弾き飛ばされる民の不条理を描く。「こびと」とは、大きな力に対して無力な民の喩え。韓国近代化の陰にはこのようなニュースにもならない人々の叫びがあったのだろう。当時の民の苦艱と怒りが伝わって来る作品だが、本作は上梓されて約40年が経つ今も韓国で読まれ続けている。今も今なりの「こびと」が不穏に蠢いているのだ。そのパワー、日本に残っているだろうか。2023/09/17

りつこ

37
低賃金で過重労働を強いられ公害で心身に異常をきたしてもその声を誰も聞いてはくれない。貧しいのは努力してないからだと蔑まれ、住んでいる家は再開発のために追い出され、新しくできたマンションに住む権利はやると言われてもとても手が出る値段ではない。搾取する側とされる側。抵抗したら職を奪われ再就職もままならない。こんなことが今でも…?と思うが、この間読んだ「中央駅」も再開発で家を失った人たちの物語だった。自分たちが得ているのは生活費ではない生存費だという言葉が胸に突き刺さる。ヘヴィだった…。2020/02/14

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