いつも手遅れ

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  • サイズ B6判/ページ数 281p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784309206325
  • NDC分類 973
  • Cコード C0097

出版社内容情報

人生の時間に限りが見えたとき、人は何を願うのか。現代イタリア文学の巨匠が18通の手紙の形で精緻に綴った短篇集。

【著者紹介】
1943年イタリア生まれ。現代イタリアを代表する作家。主な作品に『インド夜想曲』『遠い水平線』『レクイエム』『逆さまゲーム』(以上、白水社)、『時は老いをいそぐ』(河出書房新社)など。2012年没。

内容説明

人が時間に遅れるのか。時間が人を追い越すのか。裏切り、恋慕、老い、後悔…。それぞれの物語を秘めた18の書簡。

目次

海にあずけたチケット

Forbidden Games(禁じられた遊び)
血のめぐり
清らかな女神
会いにいったけれどきみはいなかった
収容所(の有刺鉄線)から解放されることの難しさについて
わが家からの朗報
ただ一弦のハープは何の役に立つのか?
あなたはいいひとだから
書かなかった本、果たせなかった旅
仮面は疲れて
人生の奇妙なかたち
昇天祭前夜
わが淡い瞳、蜜のような髪
きみを欲し、きみをもとめ、きみの名を呼び、きみを眺め、きみを感じ、きみを夢みる
書かなければならない手紙
いつも手遅れ

著者等紹介

タブッキ,アントニオ[タブッキ,アントニオ] [Tabucchi,Antonio]
1943‐2012。1943年イタリア・ピサ生まれ。イタリア語・ポルトガル語で小説や戯曲を執筆。75年、長篇『イタリア広場』でデビュー

和田忠彦[ワダタダヒコ]
1952年生まれ。東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。専攻はイタリア近現代文学・文化芸術論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

179
タブッキの残した小説の中では、おそらく最も長い作品だろう。小説は18のそれぞれ独立した書簡からなるので、短篇の集積と言えなくもないが、これはやはり1つの長編小説として読まれるべきものだろう。そして、タブッキの作品群の中で最も難解なのも、この小説だ。書簡はいずれもが「失われた時」を語る。しかも、それはきわめて身勝手な語りであり、読者との共感を拒んでさえいるかのようだ。最後の女からの書簡が、一気に小説世界を統合するが、それとても失われた墓碑のカケラを拾い集めるに過ぎない。そこはかとない「あはれ」だけが残る。2014/12/13

ケイ

109
タブツキは、こんなにわかりにくい文章を書く人だったかしら。訳もわかりにくいのかもしれない。記憶と喪失に関する短編集とも言えると思うが、喪失の痛みのようなものをなかなか汲み取ることができなかった。時間ができたら、フランス語、または英語で読んでみたい。2017/02/17

えりか

37
「いとしい君」へ、過去の後悔や過ちを、もう過ぎ去った愛を、もう失われた愛を、それでもまだここにある愛を綴る。その書簡は一人よがりで、際限なく思考が広がり続ける。虚しく響く。それは切なさや悲しさでいっぱいだ。そして大切な記憶でいっぱいだ。だからクラクラと酔う。心のどっかがズキンと痛んで張り裂けそうだ。これはきっと君へ届けられることはない。君はきっと読むことはない。君を想う時、いつだってもう過去になってしまうのだ。全てはいつも手遅れだ。だけど、だから君との記憶は永遠というのかもしれない。2016/03/07

長谷川透

27
書く、届く、読む、返事をする。手紙のやり取りには深い絆と親密さが窺い知れる。しかし一方、時間と空間の断絶をも孕んでいる。そして手紙が途絶えてしまった時、それらの残酷性が突如浮き彫りになる。『いつも手遅れ』に収められた書簡の形で記される小説は全て、断絶の生まれた後のものだ。確かに時の流れはタブッキが暗喩として用いた血のようである。血は生命を生かす駆動力には違いないが、普段我々は体内を流れる血液の事など気にはしてはいない。ところが何かの途端に血液が体外に露わになると、おぞましい存在として血を捉えるのである。2013/09/28

25
タブッキの18の書簡集。あとがきでタブッキはこの小説を書簡体小説だと述べているが、訳者の和田忠彦さんが言うように、従来の書簡体小説とはだいぶ形式が違っている。だがタブッキが書簡体小説のつもりでこの小説を書いたのなら、わたしはこれを書簡体小説だと思うことにする。一つ一つの書簡は短くて読みやすい。タブッキらしく哲学的なものもあるが、それも含めてとてもおもしろかった。やはりタブッキが好きだと思わせてくれる一冊になった。星4.5。2023/08/20

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