内容説明
パリ十六区の高級住宅地に居を構える裕福な産婦人科医・パリ大学教授のジャン・シャボは、一見、家族や同僚、仕事や社会的身分に恵まれ、妻公認の愛人もいて、何不自由のない四十九歳の働き盛りと誰もが羨む男だ。しかし内実は三人の子供と妻には裏切られ、母には疎まれ、妻の実家からは屈辱的な干渉に逢い、医療過誤の恐怖に怯え、心身ともに深く傷ついた内面を密かに抱えている。唯一心を解放できたブロンドでバラ色の肌の少女〈熊のぬいぐるみ〉との密やかな交情も、秘書の手で奪われ、その後セーヌに身投げした少女に関係する匿名の男の脅迫に追いつめられていく。ある夜、死を覚悟したジャンは、拳銃をポケットにしのばせて、パリの街へ絶望の地獄巡りに出かける…。ジッド、モーリアック、アナイス・ニンが絶賛したシムノンの「本格小説」の絶品。
著者等紹介
シムノン,ジョルジュ[シムノン,ジョルジュ][Simenon,Georges]
1903‐1989。フランスの小説家。ベルギーのリエージュの貧しい家庭に生まれる。十五歳で学校をやめ、パン屋、本屋などに勤めた後に十六歳で地方紙の記者になり、十八歳で処女作『めがね橋で』を発表して作家デビュー。二十六歳で発表した『怪盗レトン』からはじまる「メグレ警視シリーズ」は八十四篇を数え、各国語に翻訳されて世界的な名声を博す
長島良三[ナガシマリョウゾウ]
フランス文学翻訳家。1936年東京生まれ。明治大学仏文科卒業。早川書房編集部を経て翻訳家に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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藤月はな(灯れ松明の火)
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