シムノン本格小説選
闇のオディッセー

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  • サイズ B6判/ページ数 204p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784309205083
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

内容説明

パリ十六区の高級住宅地に居を構える裕福な産婦人科医・パリ大学教授のジャン・シャボは、一見、家族や同僚、仕事や社会的身分に恵まれ、妻公認の愛人もいて、何不自由のない四十九歳の働き盛りと誰もが羨む男だ。しかし内実は三人の子供と妻には裏切られ、母には疎まれ、妻の実家からは屈辱的な干渉に逢い、医療過誤の恐怖に怯え、心身ともに深く傷ついた内面を密かに抱えている。唯一心を解放できたブロンドでバラ色の肌の少女〈熊のぬいぐるみ〉との密やかな交情も、秘書の手で奪われ、その後セーヌに身投げした少女に関係する匿名の男の脅迫に追いつめられていく。ある夜、死を覚悟したジャンは、拳銃をポケットにしのばせて、パリの街へ絶望の地獄巡りに出かける…。ジッド、モーリアック、アナイス・ニンが絶賛したシムノンの「本格小説」の絶品。

著者等紹介

シムノン,ジョルジュ[シムノン,ジョルジュ][Simenon,Georges]
1903‐1989。フランスの小説家。ベルギーのリエージュの貧しい家庭に生まれる。十五歳で学校をやめ、パン屋、本屋などに勤めた後に十六歳で地方紙の記者になり、十八歳で処女作『めがね橋で』を発表して作家デビュー。二十六歳で発表した『怪盗レトン』からはじまる「メグレ警視シリーズ」は八十四篇を数え、各国語に翻訳されて世界的な名声を博す

長島良三[ナガシマリョウゾウ]
フランス文学翻訳家。1936年東京生まれ。明治大学仏文科卒業。早川書房編集部を経て翻訳家に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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藤月はな(灯れ松明の火)

82
去年、スターチャンネルのアラン・ドロン特集で『テディ・ベア』という日本未公開でDVD化もされていない映画を観た。青み掛かった色彩に人間が陥る人生の苦さと虚しさが濃縮された、妙に心に残る作品だった。その原作がこの作品だ。映画版と比べると、シャボは小心者で世間体に左右されやすい一方、自分中心にしか考えられない男だ。彼は「周囲が望むような自分を演じてきて本当の自分が分からなくなってきた」と吐露するが、自分の気持ちすら素直に言えない男なのにちゃんちゃら、おかしかった。それは常に無意識に演じられる女との違いなのだ。2018/07/12

bapaksejahtera

17
続けてメグレ以外の作品。寄り道のようだが中々そこから抜けられない。舞台はパリ。土地勘がないのが残念だが、主人公は教授資格のある高名な産婦人科医で裕福な49歳の男。よくある中年後期男の憂愁と危機が主題である。馬車馬のように働いたが、時には本能の如き性衝動で女性を弄ぶ。その度に繕ってくれる者もあるが、家族は余所余所しい。彼自身は無聊感に囚われ、自意識過剰で周囲の人間の活動や言動が現実世界の物と思えず、次第に自分の死を夢想するようになる。こういう境遇にも感覚にも陥った事はないが、理解できる気がして頁が進んだ。2023/06/11

ホームズ

6
全体的に灰色の雰囲気の物語。暗い感じの物語と後味の悪い結末。ちょっと朝から読むような本では無かったかな~(笑)淡々と進む物語で主人公シャボ医師の心理描写が徐々に変化していく感じが良かった(笑)短い割にはちょっと読むのに体力がいる読書でした(笑)2011/06/18

Hotspur

2
またシムノン。珍しく原題(『熊のぬいぐるみ』)と邦題が全く違う。 『証人たち』のシチュエーション設定に比べると本作のシチュエーションはやや作り物っぽい嫌いはあるが、それでも主人公が様々なプロセスを経て到達する嘆きは迫真。 但し、結末については好みが分かれるかもしれない。2018/08/05

7kichi

2
読後感重すぎ。しかも後味悪し。しかしながら内面心理を描いた秀作であること間違いなし。2009/02/11

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