内容説明
そしていま、母は家中をゴミで埋め尽くす。「明日は片づけるから」と言いながらも、毎日大量のゴミを家の中に運びつづける。アディーナは母からこう言い聞かされて育った。外の世界は危険よ。そこは怖い「ノック人」の世界。彼らがうちのドアをノックするとき、家族は引き離される―。
著者等紹介
ブラウンズ,アクセル[ブラウンズ,アクセル][Brauns,Axel]
1963年、ドイツのハンブルクに生まれる。1984年、ハンブルク大学法学部を中退、執筆活動に入る。2002年、『鮮やかな影とコウモリ』を発表し、2003年度ドイツ文学賞デビュー部門候補となる
浅井晶子[アサイショウコ]
1973年大阪府生まれ。京都大学大学院博士課程単位認定退学。2003年マックス・ダウテンダイ翻訳賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
11
匂いによって子供達からいじめられるアディーナ。年を重ねる毎に悲惨になってゆくクリスマス交換イベントの場面は、残酷な子供社会の最たるものだ。悪臭を放つゴミをため込む一方で、本当に大切な存在であるはずの娘を、生きながら捨てていた母親。ツルを飼育するアエラとの出会いが彼女を変えていく。母親が守ってくれない自分を守るために、一人でいじめっ子に立ち向かい、母親が顧みない家を清潔にしようとする。外へ外へと行く娘が、内へ内へとこもる母親のくびきを外す場面は、その行為自体はささいなものだが、静かな感動があった。 2014/01/10
☆すずか☆fighters!o(`^´*)
8
苦しい読書でした。アディーナの視点から物語が進み母親の心情は書かれていないので、わからないが、ネグレクトと言われる状況ではあったが母親がアディーナを大切に思い愛情があったことは最後の展開で確かなことだったとわかる。2018/06/14
ぱせり
7
死から生へ。生を勝ち取るための壮絶な戦いは、最初から「生」を与えられていたものにとっては想像を絶するものにちがいない。顔をあげて、強さを誇示するようなラストシーンは、感動的ですが、同時に今まで気がつかなかった危険なものも露わになったようで、不安になっています。2010/11/05
椿子
6
表紙とちょっとぱらぱらめくった内容に惹かれて図書館で借りてみたのだけれどとても面白かった。なんて想像力の豊かな少女なんだろう!とわくわく読んでいると、段々主人公アディーナがおかれている状況が露になってくる。子供にとって親は絶対なんだな、と思った。愛情をたっぷりかけてあげることと、それを安定させてやることがとても大事。アディーナがかわいそうで、胸が痛くなるところがたくさんあった。ツルの森でいきいきしだすアディーナの様子など、とても見事。2010/01/26
yururu
5
少女の悲しみだけでなく、家に次々とごみを運び込むお母さんの悲しみも伝わってくるようでした。仕事柄、作者が自閉症だということで前作とこの作品を呼んだのですが、自閉症の人は心(気持ち)が分からないというのは少し違うのかなと思います。むしろその人の奥底に沈んだ気分には、本人以上に敏感なように感じることもよくあります。2012/02/19