シムノン本格小説選
ちびの聖者

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  • サイズ B6判/ページ数 261p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784309204949
  • NDC分類 953
  • Cコード C0097

内容説明

パリ五区ムフタール通りの貧しい家に生まれたルイ・キュシャは、無口で夢見がちで身体も極端に小さかったため、虐められ蔑まれながらも、周囲の人々が“ちびの聖者”と呼ぶような、穏やかな微笑を常に浮かべて街の風景や人間たちを見つめている特異な少年だった。路上で行商する母と荒くれた異父兄弟たちの体臭で充満した家に育ち、中央市場で肉体労働をしながら、やがて独学で絵画をはじめ、一流の画家になっていく…「ニューヨーク・タイムズ」がシムノンの最高傑作と折り紙を付けたバルザック流のなかば自伝的な小説。

著者等紹介

シムノン,ジョルジュ[シムノン,ジョルジュ][Simenon,Georges]
1903‐1989。フランスの小説家。ベルギーのリエージュの貧しい家庭に生まれる。十五歳で学校をやめ、パン屋、本屋などに勤めた後に十六歳で地方紙の記者になり、十八歳で処女作『めがね橋で』を発表して作家デビュー。二十六歳で発表した『怪盗レトン』からはじまる『メグレ警視シリーズ』は八十四篇を数え、各国語に翻訳されて世界的な名声を博す。生涯で三百点を超える作品を発表

長島良三[ナガシマリョウゾウ]
フランス文学翻訳家。1936年東京生まれ。明治大学仏文科卒業。早川書房編集部を経て翻訳家に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ゆう

28
子どもの頃、私には足りないものだらけだった。年をとることは何かを獲得していくことで、大人になることは、多くのものを手に入れることなのだと思っていた。だから、年をとることによって失うものがあるのだと気がついた時、私は驚いた。何もかも足りないと思っていた幼い私が、本当は何もかも手にしていただなんて、信じられなかった。音楽雑誌のインタビューでホワイトストライプスのジャックが言った。「人は手にしたことのある愛しか欲しがることができない」つまり人は一度喪失したものしか欲しがることができない。そのことを思い出した。2021/11/22

いちろく

28
課題本。20世紀前半のパリを舞台に主人公ルイが画家になるまでの日常を中心に描かれた物語。あとがきによると作品の為の下調べは1時間だったとあるが、実際の地名や出来事の記載も詳細であり、著者自身のパリでの生活経験も反映されている印象。ルイの初等教育終了前後で分かれる一部と二部は、年代の明確な描写の有無をはじめ描かれ方の印象が異なり、その点が特に興味深い。ルイの成長による社会認識の差を意識したモノなのか?学生までと社会人になってからの立場の違いなのか?読み手側でも色々な受け止め方がありそうな点も、また一興。2021/11/18

bapaksejahtera

16
メグレ物とは異なる「バルザック」風の一般小説。読む年代、境遇によっては感動一入となるだろう。パリの市場で単品の野菜屋台を商う、貧しいが性的には奔放な寡婦に育てられた無垢な少年が、その美質をそのままに画家として成功する迄の成長譚。評者の言うようにシムノンの自伝的小説とは思えなかったが、主人公の精神のあり方は著者その物なのだろう。父親が異なり気質の違う兄や姉それぞれの劇的とも言うべき人生や、二度の大戦を挟んで大きく変容するパリの町、そこに住む極めて貧しい階層の今日では想像する事のできない日常が丁寧に描かれる。2023/07/03

takao

4
ふむ2023/12/27

きりぱい

4
パリの一角で暮らす一家、生活は貧しく、次々問題も抱えるのに、不思議と温かい絆が感じられる。下の男の子ルイの視線の先にあるものがひたすら寄せ集まってくるような印象で、最初はさぐりさぐり読んでいるような感じだったのに、気がついたらすっかり、あどけないというか汚れなさ過ぎるルイに気持ちが寄り添っていて・・。市場を母と一緒に歩いた時の会話と絵の具を見出した時の生き生きしてくるシーンが好きですね~。2011/05/22

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