内容説明
老婆がその長い沈黙を破ったとき一族の知られざる秘密が明かされる―南イタリア、灼熱の太陽のもと、呪われた宿命に抗って果敢に生きるスコルタ家5世代にわたる波瀾の物語。ゴンクール賞受賞。ジャン・ジオノ賞審査員賞も同時受賞の話題作。
著者等紹介
ゴデ,ロラン[ゴデ,ロラン][Gaude,Laurent]
1972年パリ生まれ。劇作家として活躍していたが、その後小説作品も手がけるようになる。特に2002年発表の第二長編小説『ツォンゴール王の死』はフランス本国で大ベストセラーとなり、「高校生が選ぶゴンクール賞」と「書店賞」に選ばれた。ギリシア神話や古典悲劇などから自由に材をとり、また戦争状態における不条理な世界を舞台にするなど、その普遍性の高い悲劇作品は現代フランス作家の中でも異色の存在。歯切れのよい、簡素で詩的な文体に対する評価も高い。2004年に本書『スコルタの太陽』を発表し、「ゴンクール賞」および「ジャン・ジオノ賞(審査員賞)」を受賞。現代フランス演劇界、文学界でもっとも期待される若手作家の一人
新島進[ニイジマススム]
1969年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒、同大学院修士課程およびレンヌ第二大学博士課程修了。現在、慶應義塾大学准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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(C17H26O4)
93
南イタリアの貧村モンテプッチョでそれぞれのやり方で生きたスコルタ一族の物語。全てを焼き尽くすように照りつける太陽は一族をいつから呪っていたのか。ロッコ・スコルタ・マスカルツォーネの娘、今は老婆となったカルメーラの穏やかで風を感じるような告白と交互して進む物語は、おそろしく残忍で残酷で無慈悲で、愛がある。忌むべき歴史から、干からびた土地からついに一人の娘が外に出た。時代は変わる。変わった。だが太陽を食らう者の家系は続く。スコルタの者の飢えは満たされることはない。一族の力ともいえる呪い、渇きは誇りとなって。 2020/09/04
藤月はな(灯れ松明の火)
72
イタリア南部の貧しい村で破落戸の子として蔑まれてきたスコルタ一族。そしてスコルタの子と遊び続けたために実の親から打たれ続け、蔑まれて捨てられたため、義兄弟となったラッファエーレ。彼らは村人の謙虚さの中に隠している傲慢さや醜い感情を毅然として撥ね付け、商売、賄賂、復讐、密売で身を援け、狂気を見え隠ししつつも逞しく、生きてきた。「娘さんをください。僕はスコルタの狂気を引き継いでいます。断ったら何をするか分からない」とエリーアのプロポーズが凄過ぎる。ドナートの虚しさが痛々しいがコルニ爺さんとサルヴァトーレが救い2016/06/11
seacalf
43
『太陽と共に生きた。太陽の香水をむさぼり、生きた。』とドメーニコの語り。家族総出で楽しんだ腹がはち切れるほどご馳走を食べたトラブッコでの食事会。ドナートの生き方。壁沿いに歩く猫のように、不法の甘い闇のなかを小舟を波間にすべらせ、星だけを見て舟を動かす・・・等々、印象的な場面は数知れず。少ない255頁の中に濃密に紡がれるスコルタ一族の物語。人間として地に足をつけて生きる喜びが語られ、胸に迫る。舞台となった南イタリアのプーリア地方に強烈に行きたくなるのは必然。しびれる一冊。まだ若いのに今後が楽しみな作家だ。2020/01/04
fseigojp
18
http://www.pulp-literature.com/chronological/ 世界文学年表に21世紀枠でゴデのこれとクローデルのブロデックの報告が入っていた 貧苦の描写がもうひとひねり欲しかった2016/06/19
mejiro
12
ある一族の年代記。初代と2代目は悪党で破天荒だが、彼らの話は短め。中心は3代目の男2人女1人の兄妹。彼らがアメリカに渡り、故郷に戻ってくるエピソードが心に残る。人生には運命の分岐点があると思う。兄妹はあの運命の瞬間を何度も振り返っただろう。現在とは違う、いくつもの未来を想像しながら…。彼らは、一度は別れを告げた故郷で生を全うする。南イタリアの大地の息吹を感じながら、人生に伴う様々な心情に思いを馳せた。 2017/10/24