夜の鳥

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  • サイズ B6判/ページ数 177p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784309203812
  • NDC分類 K949
  • Cコード C0097

内容説明

パパは泣いていた。「ぼくは自分の生徒たちが怖いんだ」それからパパは、しばらく先生の仕事を休むことになった。そしてときどき、夜中にふらりと、いなくなってしまう。木靴をはき、ウインドヤッケを着て。近所に行くときの木靴。遠くへ行くときのウインドヤッケ。近くと遠く。いったいどこをさがしたらいいんだろう。そんなときはいつも、あの鳥が、ヨアキムの夜をおおった。ノルウェー文学賞、ドイツ・ユーゲンバッハ賞などに輝く北欧文学の傑作。

著者等紹介

ハウゲン,トールモー[ハウゲン,トールモー][Haugen,Tormod]
1945年東ノルウェーのヘドマルク県トリーシルに生まれる。オスロ大学でドイツ文学・美学を学び、ムンク美術館に勤めたのち、文筆に専念。『夜の鳥』でノルウェー児童文学賞、ドイツ・ユーゲンバッハ賞など、『ヨアキム』でノルウェー批評家協会賞など、数々の文学賞を受賞する。1990年には彼の作品全体に対し、世界最高の児童文学賞であるH・C・アンデルセン賞が授与された

山口卓文[ヤマグチタクフミ]
1947年福岡県生まれ。東海大学北欧文学科およびオスロ大学北欧文学科卒業。1971年から79年にかけてオスロで北欧文学、民俗学などを研究。帰国後、ノルウェー文学を中心に、北欧文学の翻訳紹介に携わる
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感想・レビュー

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NAO

76
ノルウェーの児童文学。アパートに潜むまがまがしい秘密や家庭の不安におびえる少年ヨアキムの繊細な心理が、抒情的で印象深い文章で描かれている。ヨアキムが住んでいるノルウェーの風土はきびしく、生活もかなり厳しいようだ。大人たちの厳しい生活が、子どもたちの世界にも密接に反映されている。ヨアキムの一家はとてもいい家庭なのに、明るい未来は見えそうにないのがつらい。それでも彼らは一日一日を生きていかなければならない。話の中で少し大人になったヨアキムだが、いつまでも純粋な心でいてほしいと思った。2019/05/21

(C17H26O4)

66
ヨアキムは耐えている。病んでいる父親のいる落ち着かない家で。緊張で張りつめる子供達の世界で。夜の鳥がまた叫び声を上げる。爪の音で目を覚ます。洋服だんすの扉を破って夜の鳥が襲いかかってくるよ。何度鍵をかけたって閉じ込めておくのはもう無理かもしれない。それでもヨアキムは優しい。母親を気遣い、父親をなぐさめ、自分をいじめる友達の気持ちにさえ寄り添う。やり切れない。彼のおなかの中でふくれあがるグリグリ。ついにあふれて止められない涙。あしたは公園でヨアキムという影の少年が待っている。抑え切れない不安が見せる希望か。2019/02/05

ちょん

26
物語の中に何度か出てくる「ナポレオンケーキ」がどんなものか気になってネットで調べてみました。朝から破壊力が...なんて美味しそうで豪勢なケーキなんだ!! お話は淡々と進むのですが働けないお父さんを抱えた奥さんと子供の葛藤がミシミシと伝わってきました。2巻があるのでぜひ読みたい。夜の鳥、いいなぁ。2021/05/25

星落秋風五丈原

21
「階段は音をたてずに、そっとのぼるんだ。」(中略) ヌースン・ツースン、ぼくはつかまんないぞ。最初の踊り場までは、息を殺してのぼるんだ。そこまで来れば、シミの魔力はもうおよばない。 最初はヨアキムが抱えている孤独な心情が、想像上の父のそれにシフトしていくこの描写など「うまいなぁ」と思う。 そんな文章が少しずつ積み重なり、登場人物達の向かう方向が、見えてくる。だが、普通なら、先が明かされてゆく事で見出せる希望の光が、ここにはない。ちらちらと気配を感じる道先案内人・夜の鳥が次々と暗闇で覆うからだ。2005/05/14

不識庵

14
「日常」を描いた小説である。おとなしく際立った特徴のない主人公の少年。〈善良な〉と形容されてもおかしくはない。この少年のような人物が周囲に多くいるように思える。たとえば万引きするよう強要されたら断れないというような。少年の父親は精神疾患を患っている。それに妻と子は時に振り回されるが、しなやかなリジェリネンスを自ずと発揮する。その日々がたんたんと流れていく。たんたんと過ぎても人生は悲喜こもごもだと、改めて気づいた。そして人生はつづく。2019/10/23

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