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内容説明
残酷にして、エロティック。成熟を拒否する永遠の反抗者ゴンブローヴィチの真髄。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
66
「原題と比べるとヤケに変な題名だな~」と思っていたら文字通り、各話の最後で「バカカイッ!!」と叫ぶことになる、『ファーゴ』的な人間の不可解で不合理な愚かしさ、イアン・マキューアン作品のような強迫的な思考や妄想力の飛躍を描いた短編集。初めの「クライコフスキ弁護士の舞踏手」なんてド・クレンラボー症候群的。「計画犯罪」は江戸川乱歩の不確定の犯罪みたい。「裏口階段で」の互いに日頃の積み重ねで憎悪を募らせる妻と女中の取っ組み合いは爆笑必至。しかし、この作家、こんなに面白いのに翻訳されているのはこの本だけなんて・・・2016/04/11
スミス市松
26
冒頭の一編を読んでいて「何かいま、この文字上でのっぴきならないことが起きている!」と絶叫したのだが、全編通してこれのっぴきならない状況だった。もって生まれた「人間の性」とはどうにもそりが合わないらしい数々の「形式」が跳梁し、倒錯した饗宴がこれでもかと繰り広げられる。かといって「人間の性」の側も黙っておらず、今に「形式」を陥れてやろうと待ち構え、結局よく分からないままどの短編も淀みきったカオスへと向かう。「なんじゃこりゃ、バカカイ」←ハイそのとおりなのですが、思わずこう叫びたくなってしまう一冊です。2012/05/17
みねたか@
23
相手に認められないならばいっそ辱められたい。人の秘密の感情をその人の嫌がる行為で穢したい。清らかな肌の下に潜む邪悪や獣的な欲望をむき出しにしたい。そんな偏執的な姿を描く数編。変態といえば簡単だが、誰もに潜む獣性を感じさせるから恐ろしい。一方で、初期の筒井康隆を思わせる時空を駆け抜ける壮大なホラ話、スラップスティックの数々。この振り幅の大きさは凄まじい。2017/11/01
三柴ゆよし
21
あなたはヴィトルド・ゴンブローヴィチの小説『バカカイ』を読み始めようとしている。さあ、くつろいで。精神を集中して。余計な考えはすっかり遠ざけて。そしてあなたのまわりの世界がおぼろげにぼやけるにまかせなさい。ドアは閉めなくてもいい。向こうの部屋でつけっぱなしのテレビのことなんて、気にはならないから。最初の一篇を読んだら、大きな声で叫びなさい。「バカカイ!」と。まわりの目は気にしなくてもいい。さあ、叫びなさい……叫び……な……さ……さ……イ……イ……ギッ……ギィ……ギギギギイイイイィィィィィ……バカカイッ!!2016/03/05
rinakko
12
ゴンブローヴィチ、短篇も流石の面白楽しさ。満遍なくべったりとぬりたくられた黒い嗤い、突きぬけた破壊と変態…どうかしていて大好きだ。人を喰ったような“バカカイ”の響き(偶然にしては出来過ぎ…)に、思わずにやにやしてしまうのは言うまでもない。もう一話目の「クライコフスキ弁護士の舞踏手」から、はぁ…???の連続で呆気にとられたが、そこが堪らぬ快感なのだから世話がない。どの作品も一癖二癖ありまくりで唸ってしまう中、とりわけお気に入りは「計画犯罪」や「純潔」「冒険」「帆船バンベリ号上の出来事」「ねずみ」「大宴会」。2015/03/05