内容説明
数日前のことも覚えておらず、生まれてから部屋を出たことのない怜王鳴門は、ある日「パパ上」のノートパソコンに届いた自分の過去についての物語を読みはじめ、喪失していた自分と世界の歴史を知ることになる。驚異の記憶力でクイズに耽溺した過去の自分や、クイズチームで共に無双したはずの「サッちゃん」と「パパ」、そして言語を獲得した血統犬の「ベリアル」は、一体どこへ―?複数の世界線が現実と物語の境界を破壊する、究極の多層世界小説。第60回文藝賞優秀作。
著者等紹介
佐佐木陸[ササキリク]
1990年生まれ。埼玉県出身。2023年、「解答者は走ってください」で第60回文藝賞優秀作を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Vakira
54
なにこれ。記憶と自己の話。My壺のテーマが初っ端に。しかし読み進めると???の連続だ。初期の安部公房の様に論理的な表現だが、その内容は現実離れしている。さあ このトリックの分かった読者は走って回答ボタン押てください。と、思いきや、そうはいかない。レオナルドは解の産物?それとも佐佐木の産物?とうとう作者もお出ましだ。パパの名は解。サッちゃんは了(さとる)。答えと理解だ。多分行きつくところはそんなメタファーだったり、哲学だったりするのか、と読者は期待する。読者は理解したいのだ。納得したい。2023/12/10
NADIA
42
うーん。タイトルが秀逸だったので借り出してみたけど、正直よく分からない。文章はユーモアがあるし面白いと感じるのだけど、ストーリーの展開がなんとも。改行がほとんどない書き方もあるのだろうが、連続する悪夢を読まされているような印象が残った。読む抽象画といったところか。2024/05/04
いっち
41
タイトルを読んでクイズの話かと思ったが違った。主人公は27歳。生まれてから部屋を出たことがない。記憶力もなく、数日前のことも忘れてしまう。パソコンに表示された文章を読むと、主人公について書かれていた。高校生クイズ大会で優勝したり、音楽ライブに出たり、クーデターの発起者になったり。何が何だかわからない。選評で町田康さんは「四層の世界からなる意欲的な作品」と書いてる。四層とは、①主人公がいる世界、②主人公が書かれてる世界、③無意識の世界、④物語の書き手がいる世界。複数の階層をぶちぬく主人公。発想が面白かった。2024/01/20
あんこ
28
図書館の新入荷の棚にあった本。文藝賞優秀作のデビュー作だそうです。パパから生まれて緑の髪でクイズが好きで、世界を破壊しようとする怜王鳴門(れおなるど)の話。ちょっと私には理解し難かったなぁ。後々めっちゃ評価されて人気出たりするのかなぁ?2023/12/28
石橋陽子
19
人はなぜ写真や映像、物語や記録を綴るのか。それは現実を変えたいと願うから。この文章が後に大きな物へと繋がる。一触即発のホームでの押した押さないの小競り合いを世界に当て嵌め、防波堤を感情が越えれば人間も国家も何でもやるという例えも上手すぎ。膨大な犠牲を払っても眼前の現実が変わらないことに絶望するがその上に地層を重ねる事は出来るという。それはこれまでの人間の過ちを後世に伝えていく事なのだろう。世界に増え続ける問いの正解は誰の口からも発せられない。解答者は走ってくださいと、現代の危うさに警鐘をならされている。2024/04/29