内容説明
球地―人々はそこに散在する八つの聚落で生活していた。その球面世界を、五つの太陽が絶え間なく巡っていた。リナニツェたちの聚落の太陽が死に、太陽は四つになった。リナニツェは生きのび、奏で手の過去を封印した。そしてリナニツェはジラァンゼを生み、ジラァンゼはヌフレツンを生んだ。親子三代にまたがる壮大な物語が、いま幕を開ける。聞こえるだろうか、地に満ちる生命の賛歌が―
著者等紹介
酉島伝法[トリシマデンポウ]
1970年、大阪府生まれ。作家、イラストレーター。2011年、「皆勤の徒」で第2回創元SF短編賞を受賞し、デビュー。2013年刊行の連作集『皆勤の徒』で第34回日本SF大賞を受賞。2019年刊行の第一長編『宿借りの星』で第40回日本SF大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
103
長篇作。いやあ圧巻の読み応え、面白かった。神話とディストピアと異生態の世界が融合したような物語。序盤は造語の羅列で分かり難かったが慣れるにつれて読みが加速。目の前で繰り広げられる独特な別世界の運命が蠢く姿が見せ付ける魅力の虜になった。球凹面形の球地(たまつち)で生きる落人たち。天ではなく地の黄道を駆ける太陽はその者達にとって絶対的存在。しかし異変が。月と太陽、責苦と戻生、犠牲か栄誉か、継承する家族愛。二度のクライマックスに感極まり放心。生ける愛すべき者たちへの大聚奏、余韻に包まれながら世界へ思いを馳せる。2024/01/11
オフィーリア
54
これはとんでもない作品でした。文化も風俗も生物も全てが一から創造された独自の世界観で繰り広げる一大叙事詩。産み出された造語の一つ一つ、設定の一つ一つ綿密に作り込まれた世界観に没頭出来るこれまでに体験した事も無い素晴らしい読書体験でした。2024/04/29
そふぃあ
24
球地(たまつち)と呼ばれる球体内面の世界には、落人(おちうど)という知的生命が住んでいる。太陽は天ではなく地上を定まったルートで巡る巨大な蟲のような存在で、その"太陽"を中心に落人の生活や文化が営まれている。例の如く独創的な造語を用いて描かれる世界は生々しい質感を帯び、太陽への生贄にされることを至上の喜びとする慣習や、蟹を解体する危険な仕事、落人を喰らう"月"と呼ばれる化け物と戦う"奏で手"たちが、確固たる存在感を持って描かれる。非常に完成度の高い世界観に没頭できて最高の読書体験だった。2023/12/16
ふりや
19
今年一番楽しみにしていた小説。最高でした。あまりにも面白かった…。人間のような生物が住む球地(たまつち)を舞台に、親から子へと引き継がれる絆の年代記。そして飛浩隆さんの『零號琴』と並ぶ音楽SFの傑作。独特の造語と当て字を駆使した酉島節はより読みやすくブラッシュアップされ、読者の想像力を掻き立て、まるで物語の世界に入り込んだかのような没入感を味わえました。そしてクライマックスの鳥肌が立つような興奮と静謐なラスト。酉島作品の中でも大好きな『宿借りの星』と並ぶものすごい名作でした。間違いなく2023年のベスト!2023/12/10
ひびキング
10
やはり酉島伝法さんは凄い。今作は音楽と月と太陽。うねるような生の中ち知らずに取り込まれて、自分が人間じゃなくなっていく感覚が気持ち良い。読みかけて、一旦本を置いての繰り返しで、人じゃなくなるのと人に戻る名を繰り返すのもかなりのエネルギーを消費する。世界を創造する、それは神。2024/01/23