内容説明
落ちるのなら、ひとりでなくふたりがよかった。中学生の頃からずっとふたりでひとつだった安奈が、恋をしていると知った私は―。芥川賞候補『あくてえ』で注目を集める異才の文藝賞作家が放つ、破壊的青春譚。
著者等紹介
山下紘加[ヤマシタヒロカ]
1994年、東京都生まれ。2015年、『ドール』で第52回文藝賞を受賞しデビュー。『あくてえ』で第167回芥川賞候補(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
itica
79
正直どんな感想を持てば良いのか分からない。涼子の気持ちがいまいち理解できなかった。計算のない純粋な安奈を涼子は少女時代から好きだったのか、それとも思うままに操縦できる相手として都合が良かっただけなのか。それを考えることすら私を不快にさせる。まあ、だから「煩悩」なのかなと思うけれど。 2024/01/05
fwhd8325
63
この物語を読んでいて、少し悔しい気持ちになりました。若い頃なら、心にストレートに響いただろうに、何だか物語と私の距離感がとても悔しい。わからないままに言っておきますが、素晴らしい感性にあふれた物語だと思います。2024/03/27
ともくん
36
涼子と杏奈。 中学時代からの親友。 涼子が杏奈を支配している。 それは、悪魔的支配ではなく、友好的支配。 何故、支配欲が湧くのか。 杏奈が涼子の支配から逃れた時、ふたりはどうなってしまうのだろう。2023/12/02
日の丸タック
34
またまた芥川賞候補となった作者の作品に絡め取られた。 何故か読む手が止まらず読み進むが…散文的に撒き散らされる文章に迷子になりかける。 意味を求めないで感覚で受け止める。でもしかし何処に落ちてゆくのか? 人が『煩悩』に絡めとられ、落ちてゆく。 理屈や道理の及ばない感覚の世界に!2023/11/29
ゆみのすけ
30
中学の頃からずっと一緒にいる涼子と安奈。安奈は純粋に仲の良い友として涼子と付き合っているようだが、涼子は彼女にとてつもなく執着している。安奈にいつの間にか彼ができ、彼女がどんどん成長し、自分の知らない安奈になっていくことに苛立ち、苦しみを感じている。自分だけの安奈を取り戻すために、彼女に向ける言動は読んでいてこちらも苦しくなる。離れたくない、離したくない、ずっとそばに置いておきたいと執着し、行動する。主人公の悶えるような苦しみが伝わってきた。2024/02/14