出版社内容情報
”街に自分だけの歴史が積み重なり、深い色になっていく”(本文より)。東京の街を通じて時代を描き出す、自伝的エッセイ集。
内容説明
「東京」から時代を描き出す、“ほぼ自伝”エッセイ集。
目次
甲州街道はもう春なのさ
この世の果て
初恋の謎
階層をたどる道
デッドエンドの思い出
もしもし下北沢
暮らしているのに住んでない
とても遠いところ
ほんとうの地図
成孔さんとあの窓と
著者等紹介
吉本ばなな[ヨシモトバナナ]
1964年東京都生まれ。87年、「キッチン」で第六回海燕新人文学賞を受賞し、デビュー。88年、「ムーンライト・シャドウ」で第一六回泉鏡花文学賞、89年、『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第三九回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第二回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。著作は三十カ国以上で翻訳出版され、海外での受賞も多数。国内外問わず多くのファンに支持されている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
214
吉本ばななは、新作中心に読んでいる作家です。ほぼ自伝と言うよりも、東京の「街」をめぐるほぼエッセイでした。 著者とは、ほぼ同世代ですが、著者が5,6歳ごろから小説を書いているとは思いませんでした(驚;作家歴ほぼ50年) https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309030432/2022/07/07
jam
82
たとえば新たに既存集団に加わるときなどは、双方に緊張感がある。それは、そもそも人に「異物警戒」システムが備わっていることと無関係ではない。一方、人はそれと意識せずに膨大な数の細菌と共存しており、彼らにとって人の身体は世界の全てに等しい。常に世界は、その瞬間に在る有象無象の事がらにより変化しながらも均衡を保ち互いを緩衝する。街もまた例外ではない。作者の街語りが「ほぼ自伝」なのは、物理的な関係性だけではない。同じ時、同じ街に存在していても人はそれぞれ相違する世界を生きる。それが、人の孤独の所以かもしれない。2023/04/13
ネギっ子gen
69
生き抜くうえで、プロの小説家にならざるを得なかった著者が、<小説を連綿と書き続けている中で起こった、自分に大きな影響を与えた街とできごとだけを書いた>自伝的エッセイ。なのだが、読者的に一番読みたいところの、小説家としてのスタートについて言及がない。それに対して著者は、以下のように書く。<全く自伝じゃないじゃないか/そうお思いの方もおられると思う。私もちょっとだけそう思う。でも、どうにもできない。だって、それは私の人生の目立たない一部で、小説であることはいつもあたりまえのことだった>と。そうでしたか……。⇒2022/08/03
よつば🍀
66
表紙は、ばななさんの幼少時代。裏表紙には御家族の笑顔の写真。昭和ノスタルジーに浸りながら頁を開く。まえがきと10篇のエッセイが収録された本作はタイトル通り「ほぼ自伝」。今まで勝手にばななさんに抱いていたイメージとは異なり、より人間らしくより身近に感じた。まえがきでご自身の事を「立派な発達障害」と書かれている。その後に続く文章やエッセイからみんな色々なものと闘いながら生きているんだなと実感する。お父様である詩人で評論家の吉本隆明氏とのエピソードや業界内での裏話が興味深い。移り変わる街に想いを馳せながら読了。2022/06/29
ナミのママ
60
タイトルどおりの(ほぼ自伝)。東京で生まれ育った著者が暮らしたり、通ったり、思い出のある街について書いたエッセイ。吉本ばななファンは通じるものがあり、この年代を知っている人はストンと落ちる内容。逆にいえば知らない人にはわからない部分も多いかな。数々の受賞歴にも関わらず選考委員を引き受けないのは清々しいと思っていたが『業界づきあいもできず、選考委員にもなれない』さらに『私は小説家という職業に就職したわけではない』と書いているのがなんともいい。「階層をたどる道」の業界裏話はなかなか濃かった。2022/06/25