出版社内容情報
中東戦争を撮り続けた知られざる巨匠ジョスリーン・サアブ。波乱に満ちたその生涯を通じて自由を希求する人間の輝きを描く感動作。
内容説明
中東から西サハラへ、さらにヴェトナムへ、瓦礫のなかで女性たちの人生を見つめ、歴史の証言者たろうとしたドキュメンタリスト、ジョスリーン・サアブ。骨髄を癌で犯され余命いくばくもない彼女から、わたしは最後の作品への協力を依頼される。それは元日本赤軍幹部・重信房子と娘メイの、母娘の絆の物語だった。だが、そんなことがはたして可能なのだろうか…。歴史は無慈味に進行し、記憶は両手から零れ落ちる砂のように消えていく。死の直前まで彼女が見つめていたものは何だったのか?知られざる女性映画作家の足跡をベイルートに辿り、その生涯を凝視する珠玉のノンフィクション。
目次
ジョスリーン
懐沙
ベイルート
著者等紹介
四方田犬彦[ヨモタイヌヒコ]
1953年、大阪府箕面市生まれ。東京大学で宗教学を、同大学院で比較文学を学ぶ。エッセイスト、批評家、詩人。文学・映画・漫画を中心に、多岐にわたる文化現象を論じる。明治学院大学、コロンビア大学、ボローニャ大学、テルアヴィヴ大学、中央大学校(ソウル)、国立清華大学(台湾)などで、映画史と日本文化論の教鞭をとった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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どんぐり
75
レバノンの映画作家ジョスリーン・サアブ(1948-2019)。生前親交のあった四方田(映画研究者)が、彼女との出会いと別れを綴ったノンフィクション。ジョスリーンの最後の仕事が、元日本赤軍幹部・重信房子と娘メイの母娘の絆の物語。四方田はジョスリーンの住むパリのアパルトマンに滞在し、映画の実現化に彼女に協力し、二人から映画化の了解を得ながらも、ジョスリーンはパリの病院で急逝する。1970年の「よど号」ハイジャック事件、1982年、イスラエルのレバノン侵攻(レバノン戦争)。→2024/04/07
林克也
3
帯のコメントが多和田葉子と斎藤真理子。表紙写真が1982年のイスラエルによるサブラ・シャティーラ。それだけで読む前からテンションが上がってしまった。なお、この年4月に私は就職し社会人。 私にとって重信房子といえば中学一年の1972年5月のテルアビブ空港乱射事件。その前、5月15日には沖縄返還。さらにその前2月28日のあさま山荘事件。永田洋子だ。小学校から中学校に上がったタイミングで生じた事象が、今の物の見方の基礎になっている部分があると思う。ジョスリーン・サアブ。なにはともあれ、その作品を見てみたい。 2022/07/19
zorg
2
ベイルート生まれの映像作家ジョスリーン・サアブの生涯を書いたノンフィクション。映像作家と言われても自分には知らない世界なので、なんでこの本を手にしたか不自然なんだけど、ベイルート、重信房子、重信メイという記述にひかれたから。余命いくばくもないジョスリーンとの交流が濃密に語られる。引き込まれます。「ジョスリーンは何と闘ったのか」の著者の答えは「後記」に記述がある。2022/07/13