出版社内容情報
まるまるとした茶色いものたちが一面に出ていて、季節だなと思う。どれもきのこである。――新たなる「きのこ文学」の傑作、誕生。
内容説明
高原英理、奇想を極める。きのこ文学誕生。著者大飛躍作!
著者等紹介
高原英理[タカハラエイリ]
1959年生。立教大学文学部日本文学科卒業。東京工業大学大学院社会理工学研究科博士後期課程修了(価値システム専攻)。博士(学術)。1985年第1回幻想文学新人賞受賞。1996年第39回群像新人文学賞評論部門優秀作受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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(C17H26O4)
91
冒頭に出てくるホコリタケ、子どものころ、山に行ったときに踏んで遊んだことあるなあ、そうそう、胞子がほわほわ煙みたいに出てくるんだよなあ、なんてうっかり思い出してしまったのがきのこの思う壺だったのか、あっという間に思考がきのこの菌糸に侵された。巻末の参考文献の多さにびっくり。ということはつまり、このぶっ飛んだ話は実は菌類の生態にかなり則って書かれているってこと? きのこ酔いしたかも。「ああ、きのこ心が湧く」口にのぼらせてみたくなっている。そんな妙な気分で「菌根菌」とかをちょっと調べてる。2022/06/23
藤月はな(灯れ松明の火)
85
ヒグチユウコさんの挿画に惹かれて図書館から借りる。踏みしめた茸から胞子が飛ぶ様子は子供の頃、狸の茶袋(茸)を触った時の光景を思い出しました。この本での胞子は粉末状ではなく、粘菌系、黴系、生きている生物に寄生系など、様々です。南方熊楠氏がこの本を読んだらどう思うのかしら?中には人の意識を変容させるものもあるが、そこまで悍ましさを感じないのはこの本で描かれる人類が茸との共存を許容しているからか。そして茸の生殖は雌雄の垣根を飛び越える事を示した「時々のきのこ」のエロティシズムはあっけらかんとしている。2022/06/08
ままこ
83
なんとも摩訶不思議。グロくてどこかユーモラス。深淵で奇妙な世界観についつい惹き込まれてしまう中毒性がある。この本からもフワフワモワモワと様々なきのこ胞子が飛び散っているのかも。「やあ、かぜがよくて幸い」私も“きのこ心“が湧いてきたような気がする…🍄ヒグチユウコさんの装画も素敵。2022/06/03
いたろう
76
全編がきのこの話の「きのこ文学」?! 一応、3つの短編の形になっているが、その区分はもはや体をなさず、各短編は脈絡がない断章の連なりとなり、それが短編をまたがって所々で連関している。それはまるで、きのこが菌糸によって、広大な範囲で繋がっているように、全体で大きな世界を作っているよう。どうやらこの世界では、人間の多くが体に菌類を共生させ、更には徐々に人間から菌類になっていくようだ。まるで妖怪話のように摩訶不思議なきのこたち。そこでは、言葉さえ不思議な様相を呈している。これは、なかなか一筋縄ではいかない世界。2022/05/08
とよぽん
72
題名、表紙の絵から想像できる内容ではなかった。作者の高原英理さんは、一体どんな作家? 参考文献の一覧を見て、この作品が描く世界の特異性に納得した。地球の生命全体を存続させるために、人類の刈り取りを進める!? それは、きのこの菌に感染して人格を無化されて、菌と変わらない存在となっていく・・・ということ。きのこに対する偏愛を感じる作品だった。妙な面白さで、こんなの初めて。2022/03/03