出版社内容情報
言葉と生をきわめた文学者・古井由吉のすべてに迫る。生前の対談、松浦寿輝×堀江敏幸、蓮實重彦などの古井論集成、全作品ガイド他。
目次
対談 松浦寿輝×堀江敏幸―禍々しき静まりの反復
「古井由吉自選作品」刊行記念連続インタビュー(文学は「辻」で生まれる(聞き手 堀江敏幸)
40年の試行と思考 古井由吉を、今読むということ(聞き手 佐々木中))
作家が選ぶ偏愛的「古井由吉他撰作品」
古井由吉 競馬徒然草
古井由吉初期エッセイ・アンソロジー
インタビュー 古井睿子 夫・古井由吉の最後の日々
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yumiha
39
「文学の奇蹟」という副題。確かに他には見当たらない作家だ。生きること死ぬことを書くことによってまっとうに探った作家だと思う。たとえば、「僕の作品は自己問答」と言われ、その問答の相手が過去やら未来やらの「複数の僕」と言われたことが腑に落ちた。私自身も、無意識のうちにそういう問答をしてきたと思う。また、「言葉は自分のものではないんだ」と言われたことも、なるほどと思う。言葉そのものが持つ歴史性やら通俗性やらに引きずられて、読んだり書いたりしていることに気づかされた。翻訳された小説の読みにくさも納得できた。2021/06/18
プル
19
作家が選ぶ作品には、「野川」、「辻」がよく出てくる。「椋鳥」は読みたくなった。中村文則は真面目な寄稿をしますが、町田康は変わらずの文体ですが、やはり「野川」と「辻」は掲げられていました。2020/08/17
huchang
3
優駿でコラム持ってはったんかー…学生時代に知ってたらなぁ…と後悔しきり。あんな面白い馬エッセイ読んでたら、仁川か淀に通い詰めて人生が若干破綻…あかんわ、知らんで良かったんや。ほどほどの競馬ファンでええねんから。閑話休題、古井氏は自分の声を翻訳するかのように原稿用紙に向かうというようなことを仰っていたのが印象的。文章を書くのも難しければ、他人が書いた文章を読むのが難しい理由が少し理解できたような気がした。あの競馬エッセイの饒舌さって、翻訳しやすかったんやねー…と吹き出してしもうた。2021/07/11
いのふみ
2
「古井由吉神格化」の過程を追った論考には、はっとさせられた。当たり前に思われていることを疑ってその実態を明らかにする、これが批評だろう。古井由吉を文学的在りようや技法から論じた人があるかと思えば、小島信夫や後藤明生など、3回会った印象や電話に出る時の声といった、あまり本人に興味のなさそうな(?)形而下にはずした考察があって笑ってしまった。2021/10/11
兵頭 浩佑
2
「「はい」でもなければ、「もしもし」でもない。一呼吸の沈黙のあと、いきなり「古井です」となる。」は、いつかパクろう。2021/04/03