出版社内容情報
壊れてしまった母(かか)を救うため19歳の浪人生うーちゃんは熊野へ旅する。20歳の野性味溢れる感性が放つ第56回文藝賞受賞作
内容説明
19歳の浪人生うーちゃんは、大好きな母親=かかのことで切実に悩んでいる。かかは離婚を機に徐々に心を病み、酒を飲んでは暴れることを繰り返すようになった。鍵をかけたちいさなSNSの空間だけが、うーちゃんの心をなぐさめる。脆い母、身勝手な父、女性に生まれたこと、血縁で繋がる家族という単位…自分を縛るすべてが恨めしく、縛られる自分が何より歯がゆいうーちゃん。彼女はある無謀な祈りを抱え、熊野へと旅立つ―。未開の感性が生み出す、勢いと魅力溢れる語り。痛切な愛と自立を描き切った、20歳のデビュー小説。第56回文藝賞受賞作。
著者等紹介
宇佐見りん[ウサミリン]
1999年、静岡県生まれ、神奈川県育ち。現在大学生。2019年、『かか』で第五六回文藝賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
617
宇佐美りんの最初の作品。文芸賞と三島由紀夫賞を受賞。実に華やかなデビューである。この独特の文体と小説作方に、新しい文学の期待が集まったのだろう。その後の活躍をみても、その期待には十分に応えているだろう。本作の語りは一筋縄ではいかない。うーちゃんの一人称語りのようでありながら、それは三人称客観体と交錯しあう。そもそも、これは誰に語りかけているのだろう。「おまい」と呼び掛けられるみっちゃんだろうか。ここでもまたそれは錯綜するかのようである。それでは、内なる「かか」にか。また、ここで語られる「愛」は、いたって⇒2022/10/04
starbro
454
先日の「改良」に続いて、第56回文藝賞受賞作のもう1作を読みました。熱量や勢いは感じるものの、20歳の現役女子学生ということもあってか、あまり世界観についていけず、115頁であっさり終了してしまいました。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000256.000012754.html2020/01/23
寂しがり屋の狼さん
414
目の前で壊れていく母親。母と娘の関係は女と女の関係に…女性だからこそ血の繋がり、身体の繋がりを深く感じ取るのだろうか…方言なのか読み取りづらい文章も感情を書きなぐった感じを受け引き込まれてしまう。『愛』という字の中心には『心』があり、心を受けとることから愛が生まれると誰かが言っていたが、これもひとつの『愛』のかたちなのだろう。二十歳でこの作品を書き上げた著者には何が見えているのか、今後の作品も気になります。2020/01/06
うっちー
205
才能は十分ですが、いかんせんわざと難しくしている感じです2021/05/21
ネギっ子gen
181
<なまった幼児言葉のような言葉遣い>の独白文が綴られ、内容と軽妙にマッチ。離婚を契機に心を病み、酒飲んでは「しにたいよおう、しにたいよおう」と絶叫し暴れる、大好きだったかか(母親)に悩まされている、19歳の浪人生うーちゃんは、熊野へ旅立つ――。その地で、表紙の絵に呼応するかのように<かあかあ、とうーちゃんは叫びました。まぶたの裏に光がはじけ口のなかに濡れた髪が入ってきます。髪にからめとられた熱い舌を懸命に動かして、からすのようになきます>という末尾の文章が、切なく、愛しい……。静岡県生まれ。現在大学生。⇒2020/10/07