出版社内容情報
金と愛と日本と神がひとつに交わる狂乱の宴?―神前結婚式。現代日本の空疎を撃つ、今年度最高の傑作! 渾身の370枚。
内容説明
神社の結婚披露宴会場で働く浜野、梶、倉地―配膳スタッフとして日々披露宴の「茶番」を演じるうちに、神社の祀る神が明治日本の軍神であることを知り…。結婚、家族、日本という壮大な茶番を切り裂く圧巻の衝撃作!
著者等紹介
古谷田奈月[コヤタナツキ]
1981年、千葉県我孫子市生まれ。2013年「今年の贈り物」で第二五回日本ファンタジーノベル大賞を受賞、『星の民のクリスマス』と改題し刊行。2017年『リリース』で第三四回織田作之助賞受賞。2018年「無限の玄」で第三一回三島由紀夫賞受賞。「風下の朱」で第一五九回芥川龍之介賞候補。『望むのは』で第一七回センス・オブ・ジェンダー賞大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こーた
262
結婚披露宴。非日常の極みだ。ましてや会館は神社の境内にあって、祭神は明治の軍人ときている。は、誰それ、知らね。歴史の授業で習ったっけ。我が国のこんにちを建設した武勲などおかまいなしに、やれキャンドルサービスだ、ケーキカットだと浮かれ騒ぐ。何もないところに大金をつぎこみ、ありがたがって悦ぶ新郎新婦に仕えていると、彼らが次第に神のように見えてくる。あいまいな枠組みや謎のしきたりの数々、繋がり、絆。それらは披露宴や神事にかぎったはなしではない。社会だってフィクションなのだ。さまざまな非日常が寄り集まって⇒2020/01/13
なゆ
91
古谷田さんなのに意外に読みやすくて⁉思いがけず楽しめた。結婚披露宴という華やかで晴れやかな儀式の舞台裏というか、神社に併設された披露宴会場「高堂会館」が舞台。披露宴の裏方としての仕事をくだらないと思っていた派遣スタッフの浜野だったが、次第に“幻事業の幻製造サイド”として、仕事に妙な楽しみを見つけていく。そもそもの動機&腹の内はともかく、結果として披露宴をよりよいものにしつつスキルを高めているのが、なんかシニカルで。神社や椚会館とのしがらみや関係性の変化も面白いし、“結婚”に飲み込まれない浜野が、爽快だ。 2020/05/16
fwhd8325
77
因習にとらわれがちな世界をシニカルに、そして的確に表現されていると思いました。古谷田さんというとファンタジーの世界がイメージですが、昨年の「無限の玄/風下の朱」がとても文学的な世界だったように、この作品も文学的な世界でした。やや、この世界観に取り残されそうになりますが、一生懸命ついて行きました。2019/08/10
buchipanda3
74
時代が新しくなっても伝統と格式を重んじる世間はさほど変わらないものだ。由緒ある神社に併設された披露宴会場で働く浜野は虚飾と男性至上に塗れた結婚の儀式はお金を生む喜劇と思った。そこに神事を高みに置く女性が現れ職場を巡る勢力争いが勃発…。当初は気楽な生き方を見せた浜野が後半に世間の違和感から脱出すべく藻掻きに藻掻く姿に熱が帯びて読むのが止まらなかった。ひとり焼肉ではなく、ひとり婚という発想に驚いたが自分の本心と連れ添いたいの言葉に合点。最後も気持ちが入った。まさに酔狂な宴のような小説を痛快な心地で読み終えた。2019/06/21
アマニョッキ
53
文藝で読んでいた「神前酔狂宴」ですが、今年のうちにとあわてて再読。なぜならベスト本に入れたいからです。明治の軍神を祀る神社の結婚式場で働く青年。日本という奇妙な国の「結婚式」という儀式を通し、彼の価値観は変化していく。古谷田さんが素晴らしいと思うのは、作品ごとに文体やアプローチは違うのに、ラストには「やっぱり古谷田節だな!」と思わせてくれること。日本のナイーヴな部分にも臆することなく触れてくれるから気持ちいいんです。野間文芸新人賞受賞作。次こそは芥川賞をどうかひとつ。2019/12/23