出版社内容情報
言葉ではなく、人は沈黙によって結ばれる――小説家と宗教学者が京都で語り尽くした「沈黙」の力とは? 新時代に贈る「生」の問答。
内容説明
言葉が意味をなさなくなる時、わたしたちはどうコミュニケートすればいいのか?生と死、問い、独り、そして沈黙―見えないものを巡り語り尽くした先に、「沈黙の作法」は浮かび上がる!
著者等紹介
山折哲雄[ヤマオリテツオ]
宗教学者、評論家。1931年、サンフランシスコ生まれ。54年、東北大学インド哲学科卒業。国際日本文化研究センター名誉教授(元所長)、国立歴史民俗博物館名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授。2010年南方熊楠賞、瑞宝中綬章を受賞(受章)
柳美里[ユウミリ]
劇作家、小説家。1968年生まれ。高校中退後、東由多加率いる「東京キッドブラザース」に入団。俳優を経て、87年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。93年『魚の祭』で岸田國士戯曲賞を受賞。97年『家族シネマ』で芥川賞を受賞。著書に『フルハウス』(泉鏡花文学賞・野間文芸新人賞)、『ゴールドラッシュ』(木山捷平文学賞)他多数。2018年4月、福島県南相馬市小高区に本屋「フルハウス」をオープン。同年、「青春五月党」を復活させる。現在、岸田國士戯曲賞の選考委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
79
宗教学者・山折哲雄と作家・柳美里の6夜にわたる対話。第一夜から第四夜までは2013年から翌年にかけて各季節毎、東日本大震災や日本人の宗教感、死に関することなど話し、一気に4年以上経ち第五・六夜は連夜の対談。この最後の二夜で、身近な人の死を哀しむ人の悩みを聞く時に必要なことを、山折氏が「沈黙の作法」と発し、柳氏が「作法にあるのは美」と返すやり取りがいい。また「闇は光では照らし出せません。闇を闇で照らすことが宗教や文学の役目なんじゃないのでしょうか」深い言葉のように感じました。沈黙もまたひとつの言葉なのです。2021/02/15
yamahiko
15
私は最も身近な人と濃厚な沈黙の時間を共有できたのだろうか。言葉を失った父を看護する合間に頁をゆっくりと繰りました。2019/09/21
スリカータ
6
宗教学者の山折さんは知らなかったけど、とても博学で90年近く生きていらっしゃる経験値とストレートで鋭い物言いが面白くて、6夜に亘る対談も飽きずに一気読み。柳美里さんに対するある種の決めつけは、人によっては失礼だと怒るかもしれないけど、さすが柳美里さんは受け入れて咀嚼する。会話中に沈黙が訪れるけど、回避せずにそこから自然に接ぎ穂が生じるのを待つスタンスは、こなれた者同士だからかな?私だったら沈黙回避で余計な事を喋って後から自己嫌悪に陥るパターンなので、羨ましい。2019/11/08
まころん
5
絶句した後に言葉が続かない出来事、自分の内側から言葉の形で持ち出すことを憚られる出来事。。。。~~対話は他社と自分の「間」にひとつひとつ言葉を置いて飛び石のように足場を築く作業~~(逆説的であるが)流浪していると自己への在り方を固定できる(引っ越ししても変わらない自分?)~~言葉に束縛されない時間を持たないと心の平安が得られない(故の登山でありマラソン)~~言葉に関しても時として少ない方がいいということを実感しつつスロウペイスで読み進みつつある2021/01/17
新父帰る
3
2019年6月刊。知人の勧め本。柳さんの本は初めて読んだ。宗教学者の山折さんと柳さんと対談本だが、6年位跨って行った対談を一冊にまとめたという感じだ。柳さんは東日本大震災に深く関わって来たことを初めてこの本で知った。その行動力は凄まじいものがある。柳さんが死の問題に直接挑んでいるところが山折さんと向き合えるのかなあ~と思った。沈黙にも作法があるのかと奇異に感じながら、読み進めた。最後に山折さんは親鸞に傾倒していて、また、東日本大震災から大伴家持の和歌「海ゆかば」を連想しているところがとてもよかったと思う。2023/02/12