出版社内容情報
人生にもがく男性たちの、それぞれの抱える孤独の温度を浮かび上がらせる、リアルで切ない愛すべき19の物語。
山内 マリコ[ヤマウチ マリコ]
著・文・その他
内容説明
地元から出ないアラサー、女子が怖い高校生、仕事が出来ないあの先輩…誰もが逃れられない「生きづらさ」に寄り添う、人生の切なさとおかしみと共感に満ちた19編。情けなくも愛すべき男たちの「孤独」でつながる物語。「女のリアル」の最高の描き手・山内マリコが「男のリアル」をすくいあげた新たなる傑作!
著者等紹介
山内マリコ[ヤマウチマリコ]
1980年富山県生れ。大阪芸術大学映像学科卒業。2008年「16歳はセックスの齢」で「女による女のためのR‐18文学賞読者賞」を受賞。2012年、初の単行本『ここは退屈迎えに来て』を刊行、地方に生きる若い女性のリアルを描き、同世代の女性読者を中心に一躍人気作家となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
200
どの話にもリアルに実在する誰かがいるなと思った。失業中、母親のパート代でボウリング。結婚し子供もいる同級生とレーンが隣合う気まずさ。ずっと地元にいるから誘われ、どこかに必ず顔見知りがいる。ムロツヨシさんを彷彿させる、あの時逃がしてくれた先輩がいたから今の俳優としての成功がありますの編がなかなかいい。くたびれたサラリーマン、後輩のため口も気にしない、会社での自分は演技さと教える。タバコの吸い方がカッコいい。むしろ先輩の方が役者になれたかも。こんな会社にいたらもったいないよと思う人って結構現実でも出会うな。2018/11/08
モルク
142
女流作家が描く男の生きにくさの短編とショートショート。軽快な文章で読みやすく短時間で読破できる。いけてない男性たちが主人公で、確かにあるあると思い当たる。逃げろ!おれが逃がしてやるという話と人型写真ロボットの話がよかった。でも、一番のお気に入りは、ショートショートの「いつか言うためにとってある言葉」である。夫が妻に対しいつかは言ってやると思っているがそれを言っては…思わずクスッと笑ってしまった。2019/08/03
nico🐬波待ち中
116
なんて情けない男達。なんて不器用な男達。これが現代の男達のリアルな姿なのか。同棲していた彼女が荷物をまとめて出ていこうとする理由が全く分からない彼。仕事ができる風を装っているだけで実は役立つの彼。何をやっても儘ならない男達に、こんな男いるなと初めは苦笑いしていた私だったけれど、そんな男達の悲哀に満ちた現実、プレッシャー、ストレスに同情してしまう。確かに女の方が一枚上手で、強かで逃げ足も速い上に巧い。「おれが逃がしてやる」と後輩の優柔不断男に言い放った館林さんは、この短編集の中で唯一カッコいい男だった。2018/10/06
ででんでん
110
短編、断片集。なかでは「おれが逃がしてやる」「あるカップルの別れの理由」「ぼくは仕事ができない」「ファーザー」…がよかった。また「心が動いた瞬間、シャッターを切る」の一家とニコンが素敵。そして最後の「眠る前の、ひそかな習慣」で、死の床にある彼が『これまで少しでも関わったことのある人は全員、友達に思えた。同じ時代に生まれ、この広い地球の中で、偶然にも近くにいた人たちを、知り合いなんて冷たい言葉で表したくなかった。…どうせまた会えると思いながら、二度と会えなかった大勢の人たち』というところがひたひたと沁みた。2018/07/23
yuyu
105
まるで玉手箱のような短編集。数行しかないものから、キッチリとした作品が散りばめられている。テーマは、もがく男たちの「孤独」。孤独といっても、暗いものはほとんどなく、サラサラと流れていくような軽いものがほとんど。男の孤独と女の孤独はそこが違うのかも。同郷の作家さんのせいか、親近感がわく。「さよなら国立競技場」は、あの高校の出来事が題材かなぁ。2018/10/24