出版社内容情報
末期癌を患った夫にしてラッパー・ECDとの劇的な闘病生活の果に訪れる、〈最後〉の日々を綴った懸命なるドキュメント。
内容説明
末期癌の夫は手術によって一命をとりとめたが、半年後に転移がみつかる。繰り返される入退院のなかで育っていく子どもたちと、ときおり届く絶縁した実家からの手紙。そしてある日、わたしは夫との間に、決定的な“すれ違い”があることに気がついたのだ…。生きることの痛みと歓び、その先に拡がる自由を鮮やかに描く「生」の記録。
目次
わたしの他者たち(冬2016年11月~2017年1月;春2月~4月;夏5月~7月)
降伏の記録
著者等紹介
植本一子[ウエモトイチコ]
1984年、広島県生まれ。2003年、キヤノン写真新世紀で荒木経惟氏より優秀賞を受賞し写真家としてのキャリアをスタートさせる。広告、雑誌、CDジャケット、PV等幅広く活動中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なゆ
83
「家族最後の日」から続く石田さんの闘病。あれ?なんかまた一子さん、過激になってないか?いやそれは、不安の裏返しなのかもしれないが。そこまで書かなくても、と思ったのは確か。ずっと読みながら、夫婦でありながらもお二人の関係性が不思議だった。今もわからない。いろんな形があっていいんだろうけど。でも、すーちゃんに会いに行った日のことは、あんまりだ。誰かを傷つけるかもしれない事を書きながら、自分も傷ついているのだろうとは思う。だからだろうか、危なっかしくて目が離せなくて、また読んでしまうのだろうか。きっとこの先も。2018/08/20
mincharos
40
一子さん、ほんと心配。石田さんと結婚した当時のことも書いてあって、石田さんと出来婚したけれど、それとは別に石田さんが認める彼氏がいたと。石田さんが仕事が忙しく不在な時、その彼氏と2人で子育てしていた。2人目が出来た時、石田さんとSEXしていたという事実に彼氏が傷つき、離れていったらしい。とにかく彼女が依存している相手がほとんど男性であり、男性に依存することでしか彼女は生きられないんだなあと。「先生」に洗脳されているように感じた。嘔吐恐怖症な私は、末期癌の石田さんが在宅時トイレで嘔吐するシーンが辛すぎた。。2019/07/18
ばんだねいっぺい
40
「幸福」と「降伏」をかけているのか。この人の文を読むと「うーーーーーーーん」となる。「うーーーーーーーん」となりたくって、また、読んでしまうのだろうか。ものすごく、感情も価値観も揺さぶられる。石田さんのせいにするなよとは、思ったけども、きっと、書かれている以上のことがあるから、何とも言えません。でも、本音とはひどいことをいうことではないとだけキッパリ思います。 2018/10/06
hushi亜子
37
全く共感できないと思った「かなわない」から、何となくわかる所が出てきた「家族最後の一日」。 そして今作。 病気の人が家族にいる、それも常に傍にいる、しかも死に向かっている。 この状況が色んな意味でしんどいのは良くわかる。そしてまだ小さい子供の世話もありながら、病人の心配もし、しかも生活のためにも働かなくてはならず。 追い詰められる精神もよくわかる。 彼女の周りには彼女の事をよく理解している友人が多いから何とかやっていけてる。凄すぎる友人達だと思う。 ただ私は一子さんとは友人にはなれない。2018/04/27
nonpono
33
スエイさんと坪内さんと美子ちゃんの三角関係の写真集を読んだコメントにでていた、著者の名前。死にゆく人を看るといえば柳美里を思い出す。淡々とした日記のような文章より、彼女の写真から伝わるもの悲しさがすごく雄弁だ。とくに子供の瞳。著者のことも旦那さんのことも全く白紙の状態で読んだ。死に向かい歩む旦那、誰かに抱きしめて欲しい著者、旦那のいる家に帰りたくない著者、近づく死のメロディー。静かな世界である。だけど、わたしは題名の「降伏」が「幸福」にも感じる。帰りたくないって、帰る場所が確かにあるから言えることだから。2024/04/14