パルチザン伝説

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  • サイズ B6判/ページ数 178p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784309026008
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

仲間たちとの爆弾闘争に失敗し、沖縄に流れ着いた僕は、ある手記から謎の失踪を遂げた父の衝撃的な来歴を知る――伝説の書、復刊。

内容説明

アジアの犠牲の上に成り立つ平和と繁栄を破壊するため、僕と仲間たちはその象徴たる天皇の暗殺を企てたが、失敗に終わる。代わりに経済侵略の急先鋒だったM企業を爆破するが、その後の路線対立で僕はグループから離脱。ひとり爆弾闘争を続ける中で片手片目を失い、地下に潜行することに。沖縄の離島へ流れ着いた僕は、逃亡生活の直前に母から受け継いだ一通の手記から、謎の失踪を遂げた父の驚くべき来歴を知るのだが…。繋がっていく戦時中の父と、戦後を生きる自身の姿、そして浮かび上がる日本という国家のかたち―文学的想像力の奇蹟的な到達点を示す伝説の作品、ついに刊行!

著者等紹介

桐山襲[キリヤマカサネ]
1949年、東京都生まれ。83年「パルチザン伝説」でデビュー。92年、没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アナーキー靴下

80
私は戦争を知らない世代なのだ、というのが、本書を読んでの一番の印象。日米貿易摩擦の中成長し、中学時代にバブルが崩壊した。世界の認識は経済だった。アメリカとの関係は日本が敗戦国だから、ではなくパワーバランスの問題と思っていたし、社会というものはトレードオフやらパイの食い合いやら、そういうもので成り立っていると思っていた(そんな言葉はもちろん知らなかったけれど)。行き場のないルサンチマンを背負わせる象徴がいたならば、私は爆破しただろうか。わからないが、ルサンチマン自体を解体した、今の自分がいると信じたい。2022/05/14

南雲吾朗

53
出版に関してひと悶着あった作品。今ではそんな過激な内容とは思えないのだが、発売をめぐる問題と言う事が、まるで70年代に頭脳警察のレコードが発売禁止になった当初の状態を連想させられた。終戦間近、本土決戦へ導こうとするパルチザンの話と高度成長期に頻発した学生運動の残党の手記、それらが絡み合って一つの物語となっている。(続く)2019/04/20

らぱん

33
とても刺激的だった。二件の大逆未遂事件が手紙と手記という形で描かれる。主人公は1974年8月14日に御召列車の爆破を試み失敗した男で、幼いころに失踪した父親は1945年8月14日に宮中で弑逆を目論んでいたらしい。作中で語られる思想は過激で右も左も挑発するような内容なのだが、全体は端正な文体であり印象は詩的で叙情的で不思議な魅力がある。いくつもの符牒から想像されるのは抗うことのできない大きな力の存在であり、配られた宿命に翻弄される人間の姿だ。主題は古くなってはいない。ここには普遍的な問いかけがある。↓2019/06/05

マリリン

30
過激な未遂事件や動乱の時期の人間模様が書かれているにもかかわらず、時代を、四季をこれほど抒情的に美しく表現するとは。この著者の作品は初読みだが、発禁にならずとも、多様な評価があったと思うもののとても心に残る作品だった。壮絶な白い風景は桜…どこまでも広がってゆく白骨の群れ…満開の桜の大群は澱んだ池を制していった。死が全てを隅取っているこの静寂は…なるほど四月とはこのような季節であったか。 どのような時を経てこの季節を迎えたのだろうか。 他の作品も読んでみたい。2019/07/03

ポテンヒット

10
作者は何を一番伝えたかったのだろうか。彼らへの賛美か、社会に対する怒りか。彼らは行動に出た後、日本をどうしたかったのか。未来のヴィジョンが見えない。事を起こすだけでは非常に危険な駄々っ子でしかない。また、彼らが市井の人を見下しているのが気になる。彼らの鬱屈した気持ちは分からないではないが、他者への愛が感じられないのが読む者の居心地を悪くさせる。いくら美しい文章で纏ってもテロはテロでしかない。彼らの潔癖さよりも、自分は間違っているのではないかと自問する人の方を私は信用する。2022/02/13

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