出版社内容情報
天才翻訳家が遺した『ユリシーズ』に関する文章を集成。第12章の発犬伝をはじめ、音楽、競馬、試訳など、ジョイスフルな一冊。
内容説明
「ブルームの日」の大穴馬券や12章の「発犬伝」など、ジョイスが仕掛けた謎を精緻に読み解き、正解の翻訳を追究した著者の航跡を集大成。だれも気づかなかった細部や、未完部分の翻訳も含め、ダブリンの一日を小説に描きこんだ『ユリシーズ』全体像に迫る最良の設計図。この一冊で『ユリシーズ』が断然面白くなる!!
目次
1 出航の巻 ジョイス・翻訳・ことば(ジョイス=パリの一九二二年;『ユリシーズ』と『荒地』―奇跡の年一九二二年 ほか)
2 嬉遊の巻 ユリシーズはこんなに面白い!(スティーヴンの目覚め;わあ、ごっつごつ! ほか)
3 発見の巻 ジェイムズ・ジョイスの謎を解く(全)(「当り前」からジョイスを読む;なんだか「犬」が匂う ほか)
4 帰還の巻 ユリシーズ13‐18 試訳と構想(断章―十三章・十四章・十六章・十八章;第十七章“イタケー” ほか)
著者等紹介
柳瀬尚紀[ヤナセナオキ]
1943年根室市生まれ。早稲田大学大学院修了。英米文学翻訳家。2016年7月30日没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ナハチガル
15
40ページほどで挫折。冒頭の「ジョイス=パリの1922年」はすこぶる面白かったんだけど、『ユリシーズ』の具体的な内容や、個々の文章を取り上げて翻訳について論じた部分は、本編未読の私には早すぎる。いったん保留。「ぼくの地位はお笑いです。ピカソはぼくほど高名ではないかと思いますが、ほんの二、三時間の仕事で二万から三万フランは稼ぐのです。ぼくは一行につき一ペニーにもなりません…」。「ある友人にジョイスはこう語った。『言葉はもう決めている。僕が探しているのは、そのセンテンスの完璧な語順だ』」。2022/03/23
paluko
9
巻末、362~371頁に収録されている内容は「故・柳瀬尚紀氏が死の前日の2016年7月29日早朝まで取り組んでいた『ユリシーズ』第十五章の遺された訳稿のうち、多くの理由から訳者が決定稿と確定したと考えられる冒頭部にあたる」。フィネガンズ・ウェイクの全訳は知っていましたがユリシーズの訳が未完に終わっていることは知りませんでした。ジョイス愛の溢れる一冊。ユリシーズ第12章の語り手は誰なのか? という、謎の解明に約1/3の紙数が費やされています。柳瀬さんも1995年の初めまで気づかずにいたというその真相は一体?2021/08/19
amanon
7
包括的な『ユリシーズ』解説を期待して手に取ったが、エッセイや、未決定訳、それに先に読んだ『謎を解く』全文が収められているというかなり雑多な内容。なのでジョイス初心者にはとてもおすすめできない。何より気になったのが、著者がいうところの鼎談約(丸谷他訳)への批判…というか、ほぼ全否定的な評価。著者としては、自分の訳が決定的な訳だという自負があったのだろう。それだけに、著者の急逝が惜しまれる。また、期せずして再読することになった『謎を解く』だが、初読の際、読み落としていた箇所が少なからずあったのに気づかされた。2024/03/03
カケル
3
第13章以降の断章を読んで柳瀬訳『ユリシーズ』を全編読了した気になる。もう怖いものなんて無いぞ!2022/09/22
hsamony
0
146pまで読む。ここからは第12~18挿話に関わるのでその都度参照する。2022/03/21