出版社内容情報
明治大正期には言論界で暴れた外骨だが、戦時中は完全に沈黙を守った。知られざる戦中日記から見えてくる真に恐ろしい時代とは?
吉野 孝雄[ヨシノ タカオ]
1945年、東京生まれ。1980年、『宮武外骨』(小社)で第7回日本ノンフィクション賞を受賞。著書に『過激にして愛嬌あり』、『飢は恋をなさず 斉藤緑雨伝』(以上、筑摩書房)、『自由は人の天性なり』(日本経済新聞社)編著に『予は危険人物なり 宮武外骨自叙伝』(筑摩書房)などがある。その他、宮武外骨の紹介者として、『宮武外骨著作集』(小社)などの編集に携わる。
内容説明
筆禍による入獄4回、罰金・発禁29回に及ぶ奇人ジャーナリストは、戦中ひたすら食糧買い出しと釣りに勤しんだ。謎の沈黙時代が明らかに―。外骨の戦時個人主義を読み解く!
目次
1 『日記』をめぐる謎
2 外骨の時局批判
3 絵葉書編集に着手
4 銃後の喰潰し
5 戦禍拡大
6 自宅全焼
7 日本「降伏」
8 『日記』その後
著者等紹介
吉野孝雄[ヨシノタカオ]
1945年、東京生まれ。外骨の甥。1980年、『宮武外骨』(河出書房新社、現・河出文庫『宮武外骨伝』)で第7回日本ノンフィクション賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sasha
9
諧謔を武器に権力に抵抗して宮武外骨なのに、太平洋戦中はその過激な筆を完全に休め沈黙していた。外骨の沈黙の5年間を残された日記から、甥である著者が肉付けをして解説を加えたのが本書。具体的なことは書かれていない日記から推測を交えながらも当時を検証しながらの労作である。戦争に背を向け沈黙することもまた、ジャーナリストの抵抗だったのかな。野次馬根性で日比谷公園に展示された撃墜されたB29を見に行ったりしている。外骨さん、防空壕が怖かったから疎開したのかよ~。「過激して愛嬌あり」だわ。2017/11/28
ののまる
5
昭和16年から21年4月まで、ポッカリ空いた宮武外骨の日常を、発見された日記から読み解く。2020/12/26
ポレ
4
反骨のジャーナリスト宮武外骨が遺した昭和19年から21年の日記から、当時の足跡を再構築する試みである。赤瀬川原平で外骨を知ったからか、どうしても奇人変人の印象が強いのだが、各方面から慕われ、感謝されていたことを知り、なんだか嬉しくなってしまった。著者であり、外骨の甥である吉野孝雄もまた、戦前と現在の状況を照らし、類似性を指摘する。戦前の研究者が異口同音に警告するのを、重く受け止めなければならない。2017/10/22
アンコ椿
0
外骨釣りの腕前はいかに。2016/11/01
果てなき冒険たまこ
0
明治期から様々なものと戦ってきた宮武外骨の昭和19年から21年までの日記を読み解いていくのだけれど以前とは違って東大明治新聞雑誌文庫に籠って「絵葉書類別大集成」の編纂と資料収集に没頭していたようだ。どこに行って何を買った釣りをして何を釣ったなどが記されてるけど段々戦火が激しくなって緊張が増していくのがよくわかる。言いたいことも言えずに溜めておいたのが戦後「アメリカ様」として結実したんだろうな。一種の諦観と苛立ちが簡潔な文章に込められているような気がしてしまった。2024/04/11