出版社内容情報
日露戦争、大逆事件とゆらぐ時代、鴎外や漱石はじめ、作家は何を見て何を書いたか。外地まで射程を延ばし、日本語文学史を刷新する。
第1章 鴎外と台湾と魯迅のあいだ
第2章 女の言いぶん
終章 漱石と鴎外のあいだで――移動、地理、語りうるもの
典拠とした主な資料
あとがき
人名索引
【著者紹介】
1961年生まれ。作家。十代の頃から「思想の科学」に携わり、鶴見俊輔らとともに編集活動を行う。著書に『いつか、この世界で起こっていたこと』『きれいな風貌――西村伊作伝』(ともに新潮社)など。
内容説明
日露戦争、大逆事件とゆらぐ20世紀初頭、日本語は、もはや日本人だけのものではなかった―作家は、新しい時代にむかう女たちは、何を見て、どう書いたか。東アジア全域を舞台に刷新される、日本語の文学史。
目次
第1章 鴎外と台湾と魯迅のあいだ
第2章 女の言いぶん
終章 漱石と鴎外のあいだで―移動、地理、語りうるもの
著者等紹介
黒川創[クロカワソウ]
1961年生まれ。作家。同志社大学文学部卒業。十代の頃から「思想の科学」に携わり、鶴見俊輔らとともに編集活動を行う。著書に『国境“完全版”』(伊藤整文学賞、河出書房新社)『明るい夜』(文春文庫)『かもめの日』(読売文学賞、新潮文庫)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hasegawa noboru
5
こういうのを労作というんでしょうね。題名通り鴎外と漱石のあいだ(時間的には日本近代一五〇年の最も大きな精神史上の転換点であったとする一九〇五年~一九一〇年、日露戦争終結から大逆事件や韓国併合に至る数年)にあって、文学史の主筋からは埋もれ、消えていった?実に多くの人たちの事跡と文学表現を丹念に調べ上げ、発掘している。恥ずかしいが寡聞にして知らなかったことばかりで。例えば、軍医監として鴎外も進駐した台湾統治下で日本語で小説を書いた作家たちのこととか、辛亥革命に係わった魯迅以外の留学生作家たちのこととか。2015/08/24
かつみす
3
漱石や鷗外が西洋に留学したことは誰でも知っている。けれど、鷗外が軍人として台湾に赴任したり、漱石が満州を旅したり、といったことにはなかなか目が向かない。評論でもエッセイでもない中途半端な本だけれど、日本近代文学のアジアへの向き合い方や、日本の植民地にされた側の人たちが書いた日本語作品について多くのことを教えてくれる。特に、鷗外の奥さんが書いた小説のことや、『草枕』の那美さんのモデルになった人が中国人留学生たちの世話役になる、といったあたりが印象に残る。視野を広げると明治の文学はこんなに様変わりするんだね。2016/03/25
田中峰和
1
鴎外と漱石の文学論に期待する読者には期待外れか。維新後150年の歳月で、精神史上の転換がもっとも大きな転換が進むのは日露戦争終結から大逆事件と韓国併合への5年間と捉える著者。欧米に遅れた植民地政策は近隣アジアへと性急に広がりをみせ、台湾接収、韓国併合に至る。その頃鴎外と漱石はもちろん、両者のあいだで当時の文学を切り拓いた人々の物語でもある。北白川能久親王や魯迅、韓国近代文学の祖・李光洙や鴎外の妻しげといった人々の活動や作品を通して日本語文学としての台湾、中国、韓国の近代文学が生まれる過程が浮かび上がる。2015/12/07
karasawa_a
1
歴史の知識も鷗外、漱石についての知識も浅いので難解だった。森鴎外は森茉莉のパッパ鷗外のイメージが強かったので、もう少し調べたくなった。日本語を公用語とするのは現在日本のみだが、漢文という方法で古くからアジア諸国と知識の共有ができていたことを知っておきたい。2015/10/09
ゆっくり考える
0
副題が、日本語の文学が生まれる場所 と素晴らしいので、購入しました。 第二章は、「女のいいぶん」という題で、森しげ、前田卓、管野須賀子という三人の女性の話が、鴎外・漱石との関係において、語られますが、特に、鴎外の後妻の森しげに関する部分を、興味深く読みました。2017/03/17