出版社内容情報
かみさまがあなたを呼んでいるわ――美由と登った三輪山に、男はふたたび向かう……国家神道の根底を揺るがす傑作。
【著者紹介】
1973年青森県生。哲学者・理論宗教学者・作家。東京大学文学部卒業、同博士課程修了、博士(文学)。主な著書に『定本 夜戦と永遠』(上・下)『切りとれ、あの祈る手を』『九夏前夜』『踊れわれわれの夜を、そして世界に朝を迎えよ』他多数。
内容説明
雑誌掲載時より絶賛の声、続々!「国家神道」の根底を揺るがす、戦慄の問題作。デビュー作『九夏前夜』と対をなす「九夏後夜」収録。
著者等紹介
佐々木中[ササキアタル]
1973年青森県生。作家、哲学者。東京大学文学部思想文化学科卒業、東京大学大学院人文社会研究系基礎文化研究専攻宗教学宗教史学専門分野博士課程修了。博士(文学)。専攻は現代思想、理論宗教学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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忘備録
5
帯には「国家神道」の根底を揺るがすと書いてあるが、そうじゃない。なぜこの内容に対して、小説という形を選んだのだろうか。博士課程の学生が、生活費と学費を稼ぐために働かざるをえないこと。時間を非連続に飛ばして進める文体。一人称の発言は書かない文体。ひらがなで書いて、あえて読みにくくしている文体。お前たちは何を信じているんだ?そうじゃないことは、ここに書いてある。と、言われているようだった。自分はこの国のこと、何も知らないんだな。2020/04/12
nrk_baby
4
文体なじむと最高だ2015/04/30
yamakujira
3
表題作に掌編「九夏後夜」を収録。巫女を自称する沖縄出身の美由と、古代史を学ぶ大学院生の彩、ふたりの女性との出会いと別れは悠久の時空をたゆたうような雰囲気をかもす。美しい日本語を駆使した文章は音読すればなお心に沁みる、なんて賛辞も浮かぶけれど、物語としてつまらないから、わざわざ難解にした言葉遊びに思えてしまう。三輪神社を登拝しながら饒舌な彩の解説は興味深く、美由との対比もおもしろい。為政者が「宗教的な幻想にすがる」って分析は、愛国心や家族主義など内向的な精神性を煽る現政権にも通じるようだ。 (★★☆☆☆)2019/02/24
111
3
「神憑り」というかオカスピ女と訪れた奈良の山に、今度はそこの地元の氏子の家の女と登る。オカスピがデタラメだったと分かる。ネトウヨのみなさんがデタラメだということも分かる。古事記に日本書紀に延喜式に書いてありますう。と言われると敵わない。またこれは筆者が「取りて読め」と繰り返し語った、いわゆる切手本での「原典を読み、そして解釈することの生む、政治性、強さ」を実践して見せたのだろう。一貫しているわけだ。2015/10/25
ヤベ
2
主人公を通して見られるものの動き、ヒロインたる二人の女性の動きが重厚でハプティックな質感を持っている。作家の描写力に酔って途中で読むのを休憩しなければならなかった。神が時代の反映物で巫女が神の意志を代理で伝えるものならば、作品において二人の女性とも巫女の役割を担っていると読めたので、前半に登場した女性は現代の神の内容、後者は日本の歴史の反映した神の内容を主人公に伝えていることになる。それらが怒涛の勢いで流れ込んだ主人公が幻惑と覚醒の中で明日を生き始める契機を捉えた清新さ、前向きさがあった。2022/10/29