出版社内容情報
国と国のあいだに生きる人びとの息づかいの中からだけ見える世界の真実。画期的な漱石論の書き下ろしなどを加えて復活させた決定版。
【著者紹介】
1961年生まれ。作家。十代の頃から「思想の科学」に携わり、鶴見俊輔らとともに編集活動を行う。著書に『いつか、この世界で起こっていたこと』『きれいな風貌――西村伊作伝』(ともに新潮社)など。
内容説明
名著新生。文学と歴史の「失われた環」が、そこに残っている。漱石が、植民地「満洲」で果たしていた、知られざる使命。鴎外が、「うた」に隠した、戦場での真実と良心の疼き。異国語としての「日本語」を生き、抗った、数多くの作家たち。あくなき資料検証と、深い思索がひらいた、未踏の日本語文学史。
目次
漱石・満洲・安重根―序論に代えて
漱石が見た東京
居心地の悪い旅のなかから
漱石の幸福感
それでも、人生の船は行く
国境
月に近い街にて―植民地朝鮮と日本の文学についての覚え書き
輪郭譚
洪水の記憶
風の影
漂流する国境―しぐさと歌のために
著者等紹介
黒川創[クロカワソウ]
1961年生まれ。作家。同志社大学文学部卒業。十代の頃から「思想の科学」に携わり、鶴見俊輔らとともに編集活動を行う。著書に『かもめの日』(読売文学賞、新潮文庫)他がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ハチアカデミー
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「日本文学」という括りそのものが意図的に国境線を引いた物であり、また敗戦後に作られた溝に過ぎないことを、膨大な例証を示しつつ明らかにする。満洲などアジア諸国は勿論のこと、ブラジルに移民した日本人の文学にまで言及しつつ、植民地主義に毒された文学者の糾弾ではなく、日本・朝鮮・中国の作家たちがどのような違和感を抱きつつ創作をしたか、なぜ異国で日本語作品を創作したのかといった、それぞれの「思い」を探る試み。本書のエッセンスお詰まった「輪郭譚」が読みどころ。漱石、鷗外、佐藤春夫、そして無名の創作者たちの姿が浮かぶ。2014/01/07
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明治から1945にかけて、自分に欠落を感じていたが、そこへの手掛かりを得た。この時代・期間に、漱石が通奏低音のように響いている。今まで関心の全くなかった人・事柄が、違う新たな面を見せてくれ、鱗が落ちた思い。書中で、今まで知ってる/知らない人名/書名が、導きの糸となってくれ、新たな地平を探索出来る。日本語文学で、当り前のことながら、外地と呼ばれる世界での文学があるということが、自分には、すっぽり抜け落ちていた。2022/07/21
watershed
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1.漱石 ボヴァリー夫人の翻訳。伏せ字と翻訳の関係。植民地世界の住民としての共通感覚。 2.移民 日本からの移民が植民地で書いた文学とは?いったい何か。 ブラジル移民や日系人収容所の短歌、俳句。 2015/11/29