内容説明
一九九X年。猛毒ガスを手にした一人の男が地下鉄に乗り込む。男の胸には抹殺せよとの教義がある。座席に座り周囲を窺う。と、隣の乗客のヘッドフォンから音楽が、ロックンロールが漏れてくる―。念仏としてのロックンロールが鳴り響く、要塞化した東京。跋扈する牛頭馬頭の獄卒、都市奪還を狙う少女、「塾生」を率いる老人―輪廻とは業なのか?そして彼岸と此岸を自在に往来する、ブックマンを名乗る男が現れる―。「誤解の愛」が播種したロックンロールが、六つの大陸と一つの亜大陸、そして日本に蔓延する。ロックンロールは二十世紀史に邂逅し、その歴史を書き換えていく―。「コーマW」「浄土前夜」「二十世紀」時空を超えた三つの語りが衆生の一切を巻き込みうねる。豊饒にして過剰、過激。破格のスケールで描かれる怒涛の一〇〇〇枚。
著者等紹介
古川日出男[フルカワヒデオ]
1966年7月、福島県郡山市生まれ。98年、日本人少年のアフリカ大陸での色彩探求譚『13』で作家デビュー。06年、『LOVE』で三島由紀夫賞を受賞。朗読活動も積極的に行ない、CDブック『春の先の春へ』を始めとするCD、DVDも発表。また管啓次郎、小島ケイタニーラブ、柴田元幸との共同プロジェクトとして朗読劇『銀河鉄道の夜』を制作し、2011年末より国内各地で上演する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さっとる◎
40
私この1週間何をしてきた?本を読んだという受動的で能動的でもあるその手触りは全くない。ばけものに呑み込まれたんだな。同一の出来事が反復されない歴史、繰り返し紐解かれてやすやす反復される書物。本が歴史と輪廻のはざまにあって、輪廻は仏教だし転生はロールだし、世紀末には浄土がいるし浄土は地獄の存在を前提とする。世紀末に向かうのが20世紀で、そこで発明されたロックがまさに7つの大陸をロールし地獄からの獄卒が跋扈する世紀末に念仏が鳴り響く。ロックのうねり、輪廻の螺旋、疾走する歴史。メロディのある騒音というばけもの。2017/09/23
hanchyan@飄々
32
古川日出男。震えるほど感動した「ベルカ、~?」以来、2冊目す。何作か積んでるんだけど、「どうせなら鈍器本を!とチョイス。「しんどいことは先に片づけてしまいなさい」ていうしな(笑)。実際手に取って読み始めてみると、たしかに厚いし重いし硬いんだけど(笑)、わりかししっかりした紙使われてて600頁未満なので、”怒涛の1000枚”て感じではないです。最も読むのにてこずった1章の2を通過すれば、わりとサクサク読み進められました。んで。愛すべきバカ純文学て感じで(笑)好み(笑)2020/09/11
なゆ
21
ああ…なんかよくわからんけれども、すごい本を読んでしまった!ただただ強烈だ。ロックンロールを軸に話は世界のあらゆる大陸を巡り、そう、宗教の話にまで及ぶ。7つの書それぞれに3つの話。渦を巻くように3つの話がまじりあっていく感じに、思わず引き込まれた。荒廃した東京。繰り返す輪廻。あらゆる大陸を流転するロックンロール。アフリカ大陸をロックンロールが流れてゆく話がよかった。あと、意外なところで発見されるエルビスのジャンプスーツ。そしてプロローグとエピローグにはゾッとする。再読したら、何か掴めるのだろうか。2014/01/07
耳クソ
18
小説が小説のまま物語から死に物狂いで逃げ切ろうとするその内容や手法より料簡を見習いたいけどこれって小説を読む上でいちばんダメな読み方ではないかと感じながらも読んでいたら逃げ足の駆ける地面が裂ける。破れる輪廻(ロール)。私は泣く。昇る太陽。2021/11/04
ぐうぐう
18
573ページの厚みの中に、「コーマW」「浄土前夜」「二十世紀」と名付けられた3つの章が一括りとなり、それが7つの書として存在している。まるで無関係の3つの物語が、やがてロックンロールの響きに導かれ、少しずつ重なり合っていく。ロックのメロディが南無阿弥陀仏という念仏のように聞こえ、ロックの流転が輪廻転生と成るとき、無関係の物語に濃密な関係性が生じてくるのだ。私達が知るはずの二十世紀が、まったく違った形相として現れ、その果てに古川日出男は、誰もが知るはずのあの事件を配置する。(つづく)2013/07/30