内容説明
愛猫アブサンの死から15年。作家の庭には、常連の猫たちが勝手気ままに訪れるようになった。猫たちとの芝居心を道づれにしたつきあいの日々を通し、ありのままの生と老いの宿命を見据える感動の書き下ろしエッセイ。
目次
袖萩の時代
ケンさんの登場
アブサンものがたり
外猫という智恵の領域
吾輩は外猫である
レオンのモンロー・ウォーク
シャラランの受難
ケンさん籠猫となる
椿姫と椿三十郎
嫉妬あそび
ケンさん犬小屋へ入る
カンニング的余り風
ケンさんの結界
逆転の構図
深傷と鼾
フェイド・アウト
著者等紹介
村松友視[ムラマツトモミ]
1940年、東京に生まれる。慶応大学文学部哲学科卒業。出版社勤務を経て、文筆活動に入る。1982年、『時代屋の女房』で第八七回直木賞、97年、『鎌倉のおばさん』で第二五回泉鏡花文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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秋製
37
作家さんを教えてもらいいました。タイトルにあるように「野良猫」特にケンさんの話がメイン。著書の「アブサン」物語の一部も載っている。松村さんは落語や歌舞伎、時代劇などがお好きなのだと思った。本書によく登場していたからである。2013/06/08
Maiラピ
12
村松 友視さん初読。なんかほのぼの系で、そこに野生の厳しさや死生観などがチラホラ。・・・だけど、私は比喩や暗喩が自分の琴線がふるえたり、鳴ったりする文章が好きなのですが、著者の文はそうではありませんでした。たぶんもう手に取らないな。2011/08/10
きゃらぶ
11
前半は「アブサン物語」と重複してるなと感じた。しかし除々に読み進めていくと、作者の亡きアブサンへの想いが強く感じられ、そして野良猫達に対する“野良という誇り”みたいなものを崩さず見守っていく姿に心を打たれた。私も現在、家猫が1匹・気にしてる野良猫が2匹いる。野良猫は「かわいそうだ」と決めつけている所があったけど、この本を読んで野良には野良の生き方があるという事に気づかさせてもらった。野良猫ケンさんはその後どうなったのか。作者と同じく「どこかでひっそりと復活の準備をしている」と思いたい。2012/11/30
清少納言
5
家のガラス戸の外で織り成す外猫の盛者必衰を、ここまで仁義に溢れた交流を持ってしてみせる作者に、ただただ感服致す。野良猫や外猫と向き合ったことのない私にとって、それは新たな世界であり、いつか庭を持つ家をもったら、私も外猫と心を通わせてみたいと思わせた。それにしても、外猫の世界も、諸行無常である。ただ春の夜の夢の如し。2014/01/09
Maki Uechi
4
★★★☆☆ 我が家にもケンさんのような外猫さんがいました。白に黒ぶちの体の大きな雄猫で長いことボスとして君臨。ふてくされてぶうたれているような顔だったので「ふてぶう」と名付けていました。そしてケンさんのように年老いてそれから姿を見せなくなりました。読みながらケンさんとふてぶうを重ね少し胸が苦しくなりました。村松さんの外猫さんとの付き合い方に強い共感を覚えます。2016/11/13