内容説明
河合酔茗、伊良子清白とならび「文庫」派の三羽烏と称された“筑波根詩人”横瀬夜雨の生涯を追い、佝僂病という宿痾の病いに苦しみながら、純真・多感な抒情詩を書き続けた魂の裡にひそむ真実を描き切る。―不具貧、孤心、恋愛への憧憬、母恋い、性への執着、文芸…水上文学の中心テーマが凝縮された傑作。
感想・レビュー
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bouhito
1
筑波山麓の大宝(現:下妻市)に生まれた横瀬夜雨。幼くしてくる病に冒された不具の詩人にして、その一生を恋と失恋に費やした男。「一千万人に一人の女性がいて、君がもし幸せになってゆけるなら、友だちとしてもこの上ない喜びである」という友人の言葉が頼もしくも、恨めしい。筑波嶺ではなく、筑波根、という漢字のあてかたが良い。大伯母もそうだったが、寝たきりになった人間というのは、横臥している床に根が生って動けなくなるような、重苦しさがある。2015/05/15
ひろし
0
図書館本。帯にあるとおり、水上文学の中心テーマが凝縮されている。「神も仏も滅びしか この世は鬼の住処にて 狂い奔るを笑わんと 我という人を作りたりけん」2023/05/05