内容説明
愛に生きながら、恋に落ちていくわたし―。島清恋愛文学賞受賞、恋愛小説の新・名手、渾身の書き下ろし。
著者等紹介
小手鞠るい[コデマリルイ]
岡山県生まれ。同志社大学法学部卒業。1981年第7回サンリオ『詩とメルヘン賞』を受賞し、3冊の詩集を上梓。93年に「おとぎ話」で第12回『海燕』新人文学賞を受賞。2005年『欲しいのは、あなただけ』で第12回島清恋愛文学賞を受賞。92年からニューヨーク州ウッドストックに在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みも
31
渓流を激しく流れ落ちる水の様に、恋に落ちてゆく沢木なずな。僕の目に映るその様は、ときめきと煌く未来を予見する喜ばしいものでは無く、ただただ哀しい。何故なら、露ほども疑いを抱かない恋人に裏切られるワタルの哀惜を、自分に投影してしまうから…。正直言って、彼女の心境と行為の意味は全く理解不能。ロマン派の散文詩の如く、抒情的で美しい言葉で心象風景を描いているが、その実は醜悪な欲情に制圧された彼女の自己欺瞞に過ぎないのではないだろうか。自分が傷ついて、初めて理解した。誰かを傷つける事が必定の恋愛ならすべきではない。2017/01/27
megumi♪
23
心地よく穏やかな気持ちで読み終えることのできた恋愛小説でした。愛に溢れた恋人がいながら、同じ傷を持つものに恋をしてしまったなずな。ワタルを大切に思う気持ちは本当なのにどうしても早瀬に惹かれてしまう女心をあくまで穏やかで落ち着いた表現で書かれていて、こちらも心をざわつかせることなく純粋に共感できました。愛と恋の分量、これが丁度良いカップルは長続きするというのは本当だと思う。「心に飛び魚がはねた」という一文がすごく素敵で心に残りました。2020/06/18
花
15
飾らない優しい文章。心に寄り添いながら、語りかけてくれるような温かさを感じた。切ない愛、死、どうしようもできない心の葛藤が、真っ直ぐな文章で描かれている。物語の中は、静かな空気が流れている。どこか懐かしくて、引き込まれてしまう文章。次々と読み進めてしまった。切ない愛を深く感じた。同時に、生きている今この瞬間を大切にしたいと強く思った。素敵な一冊だと思う。2020/08/20
スケキヨ
7
まぁ、普通かなぁ。一緒にいるだけで十足する日々にいるのに、別の人を恋してしまう。。。最近、小手鞠さん作品を連続で読んでいるので食傷気味なようです。ポツリポツリ思いだした頃に読むのが良い作家さんかも。2011/09/07
dada
6
小手鞠さん初読みでした。昼過ぎに図書館で借りてきて一気読み。三本脚の机の話で出てきた、ワタルの存在が四本目の脚になった話のシーン。愛と恋の違いがうまく書かれていて、妙に納得。早瀬さんと一緒にいる時のちょっとしたもどかしさも、リアリティーに溢れていてよかった。好きだとしても、想いを葬り去ろうとするなずなの気持ち、よく分かる。2015/05/24