内容説明
『虚無への供物』の著者・中井英夫が描く戦争への憎悪、最愛の母の死、そして文学への思い…。孤独に綴られていた稀有の戦中日記を完全復刻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネムル
18
読書日記に観劇に、美少年とのいちゃいちゃ(と仮面の告白)、同年生まれ山田風太郎の日記と比べてややものんきな印象さえする。が、半ばで絶たれた学業への未練、戦争や天皇への痛罵が市ヶ谷参謀本部の一室で書かれていたというのがすこぶる面白い。中井英夫の怒りの暗渠を探るような読書体験だ。高熱で意識も朦朧とし、日記は八月九日で途絶え、敗戦を知ったのは九月になってからというのもまた、中井流の韜晦のようでさえある。本人のセクシュアリティも含め、幾重ものねじれが日記に様々な貌を与えている。2021/08/17
シタン
15
二十代前半とは思えない匂い立つ文章で赤裸々に語られる戦中日記。もはや戦争というものは我々の意識からはほとんど消えて無くなってしまった。その意味でまさに「彼方」からの日記だ。のちにアンチミステリーを書くことになる青年は、この頃も何かに反対していたようだ。内容は主に戦争、性、文芸、母の死、自殺願望。特に、小さい頃から日記をつけさせ歌を作らせたという母の存在の大きさが痛切に感じられる。 世界を覆う死の饗宴の中からも知的好奇心は止まることがなく、様々な芸術や学問や読書についても語られている。それも非常に興味深い。2018/12/11
かか
5
これが何故 今というこの時代(集団的自衛権等で揺れる日本)に敢えて発行されたのか 日記のみを読んでもピンとこない。普通の 20代前半の青年の日記である。特異といえば、彼が学徒動員の兵士であり、昭和19年から20年の8月9日迄の日記ということだろう。この間に母を失うが それは 正しく 戦争に奪われた様に彼には感じられ 生きる意味を失い 日記には 2ページ半に渡って お母さん お母さん と綴られている。そして 私が全てを理解したのは 解説 及び 解題を読んでから。これから読む方は 是非 解説以降を先に読んで2015/09/15
TKK
5
東大生であった著者の学徒出陣での配属先は市ヶ谷の参謀本部であり、終戦間近であっても古書店で美術書を求めたり美少年の新兵といちゃついたり、なんというか、のん気?なのです。いわゆる戦闘記のような壮絶さは皆無で拍子抜けしますが、全編に渡り嫌戦が漂い、これが軍の中枢で書かれていたということに驚きを覚えます。見つかったらどんな処分が待ち構えていたことか…。後の作品にも影響が色濃いので著者のファンである方は一読をお薦めします。2014/08/07
takao
2
ふむ2024/02/06